第4章 眠りの森の (裏:三成、光秀、秀吉)
「三成、入るぞ。今朝の書状にあった…おぅ光秀も来てたのか」
声の主は秀吉だ
秀吉がまず目に入ったのは、三成だ
彼は尻餅でも着いたような体制で口元を押さえ、少し離れた場所に座る光秀はにやっと意地悪そうな笑みで部屋の端を見ていた
「三成…?」
「え、あ。秀吉様」
三成は秀吉に気づき体制を整えると、困ったように笑ってみせた
「光秀は何を…なんだ?あれは?」
部屋の隅で丸まっている羽織
何にかけてあるのかと、そちらに歩き羽織に手をかけると
鈴音と共に 、真っ赤になって泣き出しそうな湖の姿を見つけた
「っ?!…っ」
羽織を瞬時に戻し二人に向き直ると
「…どういうことだ」
と、頬を染めつつ睨んだ
「くくっ秀吉、そんな顔では凄みにかけるぞ」
事のなり行きを聞き、秀吉の拳が落とされる
「お前たちが悪い」
ごんっごんっと、それぞれの頭に
「やめろ!バカ力が…」
光秀はそんな態度の秀吉に呆気を取った
「はい、申し訳ないです」
三成は頭を下げ
「湖様の変化…どうしても興味が出てしまい…湖様、すみません」
隅でじっとしていた湖は、ようやく顔をみせ
「いいです…元々は私がこうなったせいだし…見たもの忘れてくれればいいです…」
そう言うと三成は笑顔を向け
「!…ありがとうございます…ですが…忘れるのは無理かと…」
「別に悪くなかったぞ、むしろ猫から変わった姿は妖艶に見えたぞ」
「…光秀、お前は黙ってろ」
「もー!!忘れたフリでいいからっ言わないで!!それでなくても気にしてるんです!」
(鈴になりたい!この場から逃げたい!)
チリンッ
…バサッ
「あ…っばかか…!」
羽織が落ちる音と同時に黒いものが横切った
脱兎のごとく、逃げ出そうとした猫
だが…瞬時に誰かの手が優しく抱き上げた
「湖様…今は湖様ですよね?」
三成は猫を抱き上げ背を撫でた
湖は逃げたい気持ちと裏腹、やはり猫
撫でてくれる心地よさからは逃げられない
「落ち着かれてください」
「ったく…そのまま出ていってまた戻ったらどうする気なんだ」
秀吉が猫を覗く
「…そうだな…血の気の多い輩の前で戻れば襲われるぞ」
光秀の言葉は確かにありえる事
湖は耳を折り鳴いた