第14章 化け猫と私【後日談】 (表:信長・秀吉 裏:他四名)
それに驚いたのは家康、苦い薬は嫌だとなにかと言う湖が何も言わずに飲み込んだのだ
「っ・・・」
ゴクンという音と共に、湖が思い出したかのように眉をしかめる
それを見た家康は、・・っぷ、と笑い出した
「く・・・くく・・・あんた・・・」
(湖と居ると、色んな感情が忙しく駆けめぐるみたいだ…)
笑いだが止まらない家康に、湖がむっとしてみせた
「だって・・・家康の薬は苦いんだもの」
「…普通でしょ」
そっぽを向く湖の頬に家康の手が添えられる
軽く自分の方を向けると、その唇を奪う
予期していなかった湖の唇は薄く開いていて、するりと舌を忍ばす
すると・・・
「んっ、ん・・・」
甘い鼻に抜けるような声が聞える
(湖の香り・・・甘い)
ちゅぅ
最後に下唇を吸うように離せば、湖の潤んだ瞳がよく見える
今夜は、雲一つ無い夜
月明かりが差し込む室内は明るく、白い光が日中の光とは異なり、より湖が白く見える
「甘いよ…甘ったるいくらいだ…」
「あ…」
湖が家康の着物を引いた
「・・・診察するから寝て」
もの足りないそんな湖の表情に、家康は気づかないふりをし褥に湖を寝かす
腰紐を引き抜くと、痣部分の着物を開く
すると、湖は恥ずかしいのか体を縮める
今夜は明るく、肢体が浮かび上がるように見える
嫌でもはっきり見えるその痕に、家康は眉を歪めた
(上杉の事以降、湖の行動には注意していたのに。目を離したすきに…)
「ここ以外に痛い部分は出てきてない?」
「うん、大丈夫」
(だけど…ずっと見張っているわけにいかない)
痣になった部分を撫でれば湖がふるりと震える
家康は身を屈め、其処に口づけを落とした
「え・・・あっ・・・」
(こんな痕・・・残してやるもんか)
「痕は残らないし、万一残ってもあんたを嫌いになんてならない」
素直な言葉が口から出る
「家康」
「何」
自分を呼ぶ湖の方に顔を向けると、向けた顔に湖の手が添えられる
軽く寝ている湖の顔の方へと導かれ、顔を動かせば
腕が首に巻き付き、湖から触れるだけの口づけが落とされた