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【イケメン戦国】私と猫と

第14章 化け猫と私【後日談】 (表:信長・秀吉 裏:他四名)


■家康編


「湖、入るよ」

部屋の外から声を掛けると、布団の音か衣擦れの音が聞えた
家康は、政務を終えて御殿に帰る前に湖の部屋を訪れた
今夜の痛み止めを持ってきたのだ

「家康っ、少し待って・・・どうぞ」

襖を開ければ、丸い鏡を手元に座る湖の姿がある

「その鏡・・・」
「これ?前に信長さまにいただいたの。献上品の品だったらしいんだけど・・・この部分が、私っぽいからって」
「?」

湖が指さした其処には、猫の装飾が施されている

(・・・なるほどね)

「で、何してたの」

湖の座る褥の横に座ると、家康と湖の視線が同じになる
よく見れば、襟ぐりの合わせが着崩れ、腰紐も緩んでいる
家康の視線を感じ、自分の着物を見た湖は慌ててそれを直した

「っ・・・・・・あの・・・」

言いずらそうな顔をする湖

(あ・・・そんな顔もするんだ・・・)

今更ながら湖の仕草にいちいち動揺してしまう家康
だがその表情は平然とした振りを装う

「何?言いたくないこと?」
「っ・・・違うの・・・これ・・・見てたの」

湖が指すのは自分の腹部
どうやら腹部の痣を鏡に映して見ていたようだった

「あの・・・家康・・・」
「何?」
「・・・これ、消えるかな?」

ポツリと落ちるように聞える湖の声

「残っちゃうかなぁ・・・って・・・これ、このままだと・・・家康に嫌われちゃうかな・・・って・・・」

顔を上げたまま、その表情はにこやかなままなのに、湖の瞳からは次から次へと涙がこぼれ落ちる

「あ・・・」

手に涙が落ちて、ようやく湖は自分が泣いていることに気づいたようだった
家康は、それをじっと見ると深いため息をつく

「あのさ・・・誰が、あんたの処置をしていると思ってるの。こんな痕なんか残らない」

湖が、家康の瞳を見るように覗き込んでくれば、家康の心臓がどくりと波打つ

「ついでに、どうして痕1つで湖を嫌いになるのさ」
「っ・・・」

湖の涙が止まったかと思えば、今度は真っ赤に染まる
それにつられて家康の頬も赤く染まった

「え・・・えっ・・・あの・・・」

膝に乗せていた鏡が転がり落ちた

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