第14章 化け猫と私【後日談】 (表:信長・秀吉 裏:他四名)
「私・・・本当に心配で・・・不安で・・・だから、ちゃんと見ておきたいの・・・意地悪しないでよ」
最後の部分はかなり小声であったが、政宗はしっかり聞えていた
「そうか」
「・・・」
「俺も同じくらい心配で、不安だ」
「え・・・」
さらりと、衣の上からやさしく湖の腹を撫でる政宗は続けた
「お前の此処に傷が残らないか」
「・・・っ」
ぴたりと止まって手は、湖の痣がある部分だ
「・・・ずるい・・・」
「ずるい?なんでずるいのか、その方が解らないぞ」
(さっきの・・・お返しだ・・・これ)
湖は先ほど自分が「意味解らない」と言ったことへの仕返しだと悟る
「だから、お前と同じように傷を確認する。無理強いはしない、お前が俺の傷を確認するのと一緒に確認してやるさ」
「・・・・・・昨日、見たでしょ」
「遠くからな」
「すぐ前に家康と政宗の顔がありました」
「これよりは遠くだ」
お互い言い合いのようになってくると、どちらともなく笑いはじめた
「その顔がいい。お前は、そうして笑ってろ」
湖が笑いはじめたのを見て、政宗は優しい眼差しで湖を見るとそう言った
「政宗・・・」
(政宗・・・私、改めて貴方の事・・・)
「大好き」
それは、今夜会ってから一番湖が綺麗に見えた瞬間だった
「・・・ふやけた顔だな」
「ふふ・・・政宗が大好きって顔だよ」
「・・・くそ・・・、煽るな・・・」
湖が素直に返せば、政宗の頬が薄ら染まる
「で、どうするんだ?」
「・・・うん。私の痣・・・見て良いよ。だから政宗の怪我も見せて?」
「あぁ」
湖が、今度は躊躇することなく政宗の着物に手を掛け上衣を開けさせていく
それに併せて政宗も湖の着物の袷を開き、片方の肩から寝衣を下ろした
湖の目には、さらしを巻かれた政宗の胸が
政宗の目には、赤黒い痣の湖の腹が
それぞれの傷跡を確認した
「ここ・・・痛い」
湖が、政宗の当て布が当たっている部分に手を置いた
「いいや。あいつの爪が擦ったくらいだ・・・光秀が大げさなんだ。俺は、肋骨なんて折れてない。ただのかすり傷だ」
政宗はそう言うが、かすり傷ではなかった