第14章 化け猫と私【後日談】 (表:信長・秀吉 裏:他四名)
「素直で、優しくて、なんでも一生懸命・・・それが、湖だ」
ふうと、秀吉のため息が聞える
「今回だって、あの白粉という猫の事で一生懸命だっただんだろう。さすがに、閉じ込めた部屋を出たって聞いたときには焦ったし、お前の血で出来た猫を見た時にも肝が冷えたが・・・お前も、信長様も、みんなも・・・この安土も全部無事だ」
「秀吉さん・・・」
綺麗に整った髪から手を離すと、今度は湖の両頬に手を添え、自分の方を向けさせる
「それを言うなら・・・俺だって謝らないとならない。お前が自分の血で作った猫・・・痛い思いをさせてすまなかった・・・」
合わせた秀吉の目は、悲しそうな色をしていた
「火の中で怖かっただろう・・・この怪我も・・・」
秀吉の片手が、湖の脇に当たる
ぴくりと身体を揺らせば「すまん・・・痛いか?」と、その手を外す
「家康がくれる薬が効いてるから、痛くないよ」
「・・・ならいいが・・・」
「・・・秀吉さんは?痛くない?」
湖が、秀吉の胸に手を当ててくる
その動作にどきりとしながらも、態度は変えずに彼は微笑む
「こんなのは怪我のうちに入らない。光秀が大げさなだけだ」
あの怪物の放った攻撃から信長を庇った際、もろ受け止めた事で肋骨が折れた
少し腫れてはいるが、さらしを巻けば問題ない
湖に触れられた位なら支障もないものだった
「・・・本当に?」
疑いの眼差しで、湖が自分を見る
「参ったな・・・」
そう言い、秀吉が上衣を開けさせさらしを見せる
「ちゃんと処置もしてあるし、無理もしていない・・・こんな時間に出歩く湖よりは安静にしていると思うがな」
「っ・・・!」
いきなりの指摘に湖は言葉を詰まらせた
秀吉は、上衣を整え
「さて・・・家康の外出禁止を破った悪い子には、お仕置きが必要だろうか?」
「っ・・・」
頬を染めて秀吉を見上げるその瞳に勘違いしそうになる
湖が自分に好意を寄せているのじゃないかと
ふっくらな唇を親指で撫でると、触れるだけの口づけを落とす