第14章 化け猫と私【後日談】 (表:信長・秀吉 裏:他四名)
「貴様が居なければ、あの坊主は今夜ものうのうと化け猫を操っていたかも知れん」
「・・・信長様・・・」
「貴様の迷惑やら面倒など、そんなうちには入らん。貴様が何をしようが、俺の邪魔にはならん」
湖が信長を見れば、彼は穏やかな笑みを浮かべていた
「だが、貴様の泣き顔を見るのは飽きんな」
ぼたぼたと落ちていく涙を、信長は指ですくって見せた
「私は、安土に居て良いんですか?」
「なんだ?上杉がそんなに良かったのか」
眉間に皺を寄せる信長は、本当にむっとしているように見える
湖は、思わずクスクスと笑い出した
「なぜ笑う」
「・・・なぜって・・・どうして、謙信様の事が出てくるのかと・・・」
「・・・貴様は、そうやって笑っていればいい」
「ふふっ・・・はい。ありがとうございます」
満足そうな笑いを見せる信長に、湖は頬が熱くるのを感じた
「此処に来たついでに聞かせろ」
「はい」
「何処を刺した?」
刺した・・・というのは、昨日、湖が自分で血を流した場所の事だろうと
少しだけ沈黙したのちに気づく
「えっと・・・ここを・・・でも、傷跡1つも残っていないんです。血が出てちょっとだるかったのも、煙管が戻してくれたのか・・・まったく問題無いので」
湖は、自分の太ももを指さして見せた
信長は、そんな湖をやんわりと持ち上げ自分の胡座の中に入れると寝衣をめくろうとする
「へ・・っ、ちょっと・・・まってください!」
湖は、それに気づき直ぐに寝衣を押さえた
着物と違って、一枚しか着ていないそれは、意図も簡単にめくれてしまう
しかも、今夜は下着も履いていない
「確認させろ」
「まってくださいっ、昨日・・みなさんに見せましたよね?!」
「見たが、腰より下は家康が居て見てはおらん」
確かに、目を開けた際
家康は湖の前で立ち膝をしていた
その正面の信長様は、見えていないと言われれば、見えていなかったのかも知れない
「・・・駄目です」
「では、脇の傷を見せろ」
「それも嫌です」
ふんと横を向く湖
次は、命令形で言われるだろうと思っていたが、信長から帰ってきたのは別の言葉
「痛みは無いのか」
その言葉に彼の顔を覗けば、まるで自分が怪我でもさせたかのような顔をしている