第13章 化け猫と私
「・・・そうですね・・・」
光秀の言葉に応えるように三成が同意した
燃える寺を目の前に、4人と1人が対峙している
その少し距離を置いた前方では、相変わらず木々が倒れる音に、土煙
だが、その音は先ほどよりも大きく何度も響いている
「・・・今、あの式神は操っていた者が無くなって、自我もなく暴れている。相手は、型も急所も命も無い化け物だ。いつまでもあのままでは、あの3人でも押さえられないだろう・・・」
顕如は、前方を見てそう言った
「ですが、確証がありません。貴方があれを鎮められるという確証が」
三成がそう言うと、光秀は拳銃の火種を握り消し懐に銃を収めた
「だが、こいつのいう事には一理ある。命ある物相手であれば、信長様も問題無いだろうが・・・まかり間違っても神相手だ・・・」
「あの人なら、神だって負けませんよ・・・」
家康の刀は変わらず顕如に向けられたままだ
「では、お嬢さんに誓おう・・・その傷、癒やすことは出来ないが、その抱かれている猫を必ず休ませると・・・」
「・・・湖に?」
「・・・・・・」
湖は、黙って顕如を見ていた
3人は、目配せをし、家康は刀を下ろした
「次は取引には応じない」
顕如はそれを聞くと、林の奧へと姿を消した
程なくして、木々の音は静まりあたりは静かになった
そして、寺の火は徐々に収まり
まるで何も無かったかの用に虫の声が聞えはじめる
ざっ・・・ざっ・・・
人の足音が聞え、信長、秀吉、政宗の姿が月明かりに照らされた
「湖・・・」
信長の低い声が、湖の耳に届く
視線をあげれば、信長の手元には赤い猫の形があった
「・・・おし・・ろい?」
湖が呼べば、それは信長の手元から飛び降り、湖に近づく
そして、白粉の身体に入っていくように赤いものは白い身体に収まった
湖は手元にある冷たくなった猫を見ると、その耳がぴくりと動く
「っ・・・、白粉」
呼ばれた猫は、ふわりと浮き湖と同じ視線に
『面倒を掛けて済まなかった』
猫が口を開けば、人の声が聞える
その様子に、三成、家康、秀吉、政宗は驚き目を開き
信長、光秀は、興味深そうに見守った
『巻き込んでしまった上・・・心苦しいが、1つ頼みがある・・・』