第13章 化け猫と私
(顕如さん・・・あの人と知り合いなの・・・?)
「っふざけ・・・るな・・・!や・・と、手にはいっった・・・ち、から・・・を・・・っ」
睨み付ける僧に、顕如は哀れみの視線を向けた
「お前は、この神鏡に飲み込まれたのだ・・・だが、もう鏡は無くなった・・・」
「お前は、もう元に戻れるんだ・・・」
僧から、淡い光がいくつも出てくる
それは小さな球体のようで、まるでシャボン玉のように次から次へと出ては消えていく
最初は、それを逃がさないように追っていた手も、その数が増えていくほどに大人しく
ただその光の球体を呆然とみている
「もう・・・休め・・・教よ」
「・・・顕如様」
(・・・あの人の声が・・・)
三成の背に隠されていた湖が、その身を乗り出し様子を伺う
「顕如様・・・あぁ・・・貴方様の忠告に従えなかった私を・・・どうかお許し下さい」
「・・・あぁ」
「申し訳ありませんでした・・・」
そう言うと、僧は僧衣だけを残し消えた
跡に残ったのは、僧衣と人型の灰
だが、その灰は直ぐに火災と風で煽られ飛んでしまった
「・・・私の弟子が・・・その猫には悪いことをした、許せ」
顕如は、湖を見てそう言った
「許せで済むと思ってわけ・・・」
家康の刀が顕如に向けられる
また三成もしかり
「・・・あの式神、そのまま利用させて貰って信長の首を取ることはできるが・・・詫び代わりに鎮めてやろう・・・」
そう言い、二人に見せたのは残った鏡の片割れだ
「あの獣、貴方が止められるとおっしゃるのですか?」
「っ、三成・・・」
顕如の言葉を聞き、三成が刀を下げ尋ね返す
「あぁ。ただし、今は鎮めるには6対1と分が悪い・・・距離を取らせて貰ってからだ」
「6・・・?」
「・・・おや、気づかれていたか?」
いまだ燃えている寺から姿を現したのは、顕如に銃口を向けながら出てくる光秀だ
「っ光秀さん・・・いつから・・・」
「お前が太ももに刃物を突き刺した後くらいだ」
「「っ・・・」」
光秀が横に来れば、湖は気づいた
(あの香り・・・光秀さんのお香の香りだ・・・)
「じゃあ、逃げ道用意してくれたのは、みつ・・・」
そこまで言うと、銃口を握っているのとは別の手で口を覆われる
「今はそんな話をしている時ではない、湖・・・」