第13章 化け猫と私
「っ・・・私にできることならするよ」
『私と子猫と煙管を・・・どうか同じ場所に埋めて欲しい』
「・・・っ」
湖の瞳から涙が零れる
『煙管は、付喪神。私は、これでも神に昇格した身・・・だが、この身はもう動かない・・・巻き込み、傷つけた上、申し訳無いが・・・お前さんに、湖に頼んでいいか・・・?』
白粉の体に手を伸ばすと、その冷たい体を引き抱き締めた
すると、白粉とは別の声が聞えた
『・・・少しだけ、残してあった力は・・・湖様に・・・』
「っ、煙管」
顔を上げれば消えていた煙管の姿が、湖の前にあるのだ
もう本当に薄らと
家康に向かって手招きをすると、家康の懐から小さな赤い猫が湖へと寄ってきた
湖の血で出来た赤い猫
その猫の額を煙管が撫でるような仕草をする
すると、猫は湖の傷口から湖の身体に戻るように消えていった
そして、湖の足の痛みが消える
「え・・・?」
『・・・・・・』
煙管は、にこりと笑うと姿を消した
湖は、自分の懐に閉まってあった煙管と出すと、それは2つに割れていた
『・・・煙管に感謝せねばな・・・』
白粉は、湖の手にある煙管にすり寄るような動作を見せた
『湖・・・よろしく頼む』
そして、白粉は目を閉じると
ぽとりと湖の膝に落ちてきた
湖は、動かなくなった白粉の身体と、割れた煙管を抱いて声を出さずに泣いていた
やがて、秀吉が湖の元に歩み寄り視線を合わせると
「願いを聞いてやるんだろう」
そう言って、ぽんぽんと頭を軽く撫でる
「・・・っ、うん」
家康も側により、革袋から子猫の亡骸を取り出す
すっかり火の気の収まった寺跡に、政宗が深く土を掘り
湖は3つの亡骸を其処へと収めた
「夜が明けたら周辺の被害を確認する必要があるな・・・秀吉、用意をしておけ」
「は」
「・・・湖、戻るぞ」
湖は、盛られた土に手を置き撫でると
「はい」
そう返事をして歩き出す
安土の夜が明けていく