第13章 化け猫と私
僧の顔にあった火傷はみるみる広がり酷くなる
原型を留めているのは目のあたりくらいだ
ようやく開くような唇からは、ガラガラの声が出てくる
「っ・・・よく・・・、も・・・」
あまりの恐怖に、動けず声も発せず目だけ見開いてしまう湖
いつの間にか、煙管も姿を消してしまっていた
微動だできない湖に、僧は手を伸ばす
ガッ・・・!!!
あと少しで届くところで、僧を弾き飛ばしたのは鞘に収まった刀
湖背後から髪を掠めるように現れた鞘
その鞘には見覚えがある
「っ・・・家康っ!」
後ろを振り返ると同時に抱え起こされ、その姿が目に入る
「三成くん・・・っ」
抱え起こしたのは三成、僧を飛ばしたのは家康だった
二人は、湖を守るように僧と対峙する
「湖に何をした・・・」
家康の声がいつもより低く冷たい
「・・・湖様に手を出されましたか・・・?」
三成の背に回された湖には、その表情を見ることができない
だが、
(・・・三成くん・・・家康・・・いつもと・・・違う・・)
二人の殺気がびりびりと伝わってくる
そんな中、炎の向こうにもう一人の影を湖は見つけた
「・・・顕如・・さん?」
湖の声に反応し、3人が視線を寄せれば
炎の奧からこちらに向かって歩いてくる顕如の姿を捕らえることが出来た
「・・・お嬢さんは、無事だったか・・・」
少し焼け焦げた僧衣にまだ残る火の粉を払うと、僧に対して何かを見せる
それは、あの鏡だった
真っ二つに割れてはいるものの何処も焼けた形跡はなく、綺麗に光り輝く鏡
「あぁ・・・わたしの・・・わた・・しの・・・」
僧は、手を伸ばし顕如へと近づく
「・・・教・・・終わりだ」
顕如は、僧が自分へたどり着く直前に鏡半分をたたき割るように地面へと投げつけた
鏡は、きーんっという高い音を立て粉々に砕け散る
「うわぁあああぁぁあぁっ!!!!」
粉々に粉砕した鏡の破片に顔をすり寄せるように屈む男に、顕如は片膝を付きその肩に手を乗せる
「お前の行った所業は仏の道を背いたもの・・・その罪は私も一緒に引き受けよう・・・だからもう休め・・・」
苦しそうな顔は、湖にもよく見えた