第13章 化け猫と私
(ったく・・・両手で受けたのに、痺れていやがる・・・)
わずかに震える両腕に、政宗は力を入れ直す
顕如もまた、錫杖を構えていたが、擦った化け猫の腕に飛ばされよろめいていた
「全員・・・全員、死んでしまえばいい・・・」
僧の声がはっきり聞えた
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「秀吉・・・」
天主から見える風景、城下の直ぐ近くで木々が倒れ、土煙が上がっていた
「どうやら、こちらから出向いた方が早いようだ」
信長は、そう言うと飄々と歩き始める
「・・・は」
「・・・どうした?何か歯切れの悪そうな返事だな・・・」
「・・・っ・・・実は・・湖が消えました」
歩きながらの会話
一瞬の沈黙ののち、信長は「まったく・・・」そう小さく呟いた
これより数刻前、政宗から湖を閉じ込めたことの伝言があって、三成が出向いた
が、その時にはもう部屋はもぬけの殻
すぐに秀吉に報告をし、三成は政宗から伝言のあった林の方へと急ぎ向かっていた
「あの小娘には退屈しない・・・」
「・・・無茶をしてなければいいのですが・・・」
信長と秀吉は連れだって、土煙の立つ方向へと向かっていった
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蹄の音と共に駆けつけたのは三成と家康
いつになく急ぎで出て行く三成の姿を見かけた家康
事情をかいつまんで話され聞くと、一緒に此処へ駆けつけたのだった
「っ政宗さん・・・」
「政宗様!」
化け猫と僧に対峙する、政宗と顕如の姿が目に入った二人は
馬を降り、政宗の元に駆けつけた
「・・・どういう事態ですか・・」
不気味な赤い物体に刀を向け、顕如を横目に家康が尋ねる
「今は、あいつの相手をしている暇はないんでな・・・」
「・・・ほざくな・・・」
政宗が顕如を見ずに答え、顕如もまた僧を見たまま言葉を発した
「三成、なんでお前が来るんだ・・・まさか・・っ」
「はい、湖様がどうやってかは不明ですが、居なくなりました。おそらくこちらに・・・」
ちっと舌打ちをすれば、政宗は僧を睨み言った
「あいつが、秀吉の言っていた僧だ・・・そしてあの赤いのが母猫・・・今は、あの坊主の式神だと言ってたな・・・」
「光秀様の話にあった僧侶も、この方のようですね」