第13章 化け猫と私
彼から零れた言葉を聞き取れず、湖は煙管の背中越しに見える外に目をやった
木々が倒れたのか鳥が飛んで、煙のような白い筋が見える
そして、赤黒い塊
(・・・まさか・・・)
木々が倒れて、その隙間を塗ってかすかに見えるのは
赤い猫
人より大きなそれが、暴れているようだった
それは、白粉と同じで片耳が無い猫だった
(・・・白粉っ)
視界を円の中に戻せば、自分の方を向いて首を傾げるような動作をする血で出来た猫が居る
(あのお坊さん・・・?あのお坊さんと何か話していた・・・これはその人がやったの・・・?)
自分の血が円に入れば、猫がどんどん大きくなっていく
ただ白粉のように暴れるようなことは無い
湖は猫に回ってみせるように・・・と言葉を出さずに指示すると
猫はその場でくるりと回って見せた
(・・・私が動せる・・・)
「・・・むごい・・・」
煙管がその場に座り込んだ
ただ呆然とその光景を見て
(・・・ひどすぎる・・・でも・・・もし・・・もし・・・白粉がこどもを見たら・・・?)
湖に1つの考えが浮かんだ
自分の足にいまだ突き刺したままの刃物
「・・・だいじょうぶ・・・」
自分で口にした言葉に深呼吸し目を閉じた
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ばぎっ・・・だぁああんッ・・・!!!
木々が倒れ、土煙が上がった
顕如と政宗に遅いかかる赤い猫が、手を一降りした
それを二人が交わすと、猫の手から飛び散った赤い液体が木々に当たって、木々が切れた
「っ・・・なんだ?!これは・・!」
「くくっ・・・これは、私が今まで作った中で一番の式神だ・・・探していた化け猫をようやく手に入れることが出来た・・・」
「・・・惨いことを・・・」
「惨い?惨いのは、俺を捨てた親だ・・・居場所を焼き払った信長だ・・・俺の才能を認めなかったあんただっ・・・!」
金色の目が血走ったかのように見開く
そうすれば、化け猫の大きさが一回りほど大きくなったように見えた
(・・・っこいつ・・・)
政宗は刃先を化け猫から、狂った僧に向けるが、すぐに気づいたように化け猫が襲ってくる
ざっ・・・だぁぁんっ・・・!!
(っくそ・・・重てぇ・・・っ)
刀でそれを押さえるが、それは人の早さより重さよりも何倍も大きく強いものだった