第13章 化け猫と私
煙管が白粉を横目で湖に語りかける
それは、死を意味しているのかも知れない・・・そう湖は思った
ぐっと拳を握り、下に視線を落とせば・・・
円から赤い筋が流れているのが目に入った
「・・・血・・・」
(血液が・・・あ・・・)
ぐるりと見回し、湖は部屋の隅に駆け寄った
「湖様?」
煙管は、その様子を見守っていたが
湖が手に持って戻ってきた物を見て驚いた
「・・・血かも・・・血なら届くかも・・・」
(血が届いたとこで、どうなる物でも無い・・でも、白粉をこのまま一人にしておくのは絶対に嫌だ・・・)
「湖様、私が先ほど言ったこと・・・」
「大丈夫!ちょっと試してみるだけ」
そう言うのと同時に、煙管が止める暇もなく、湖は円の近くに座ると着物を割り片足をだした
そして、太ももの上に手に持った刃物の破片を突き立てる
「っ・・!!」
自分の意志で覚悟してやったことだとは言え、その傷みに汗が噴き出る感覚
「っ・・・湖様・・・」
血が滴るように、湖は刃物を押しつける
ぐぐっ・・
皮膚に刃物が突き刺さる
嫌な音とも共に、ふくらはぎを真っ赤な血液が伝った
それは、まるで白粉を・・・円の中央を目指すかのように、意志を持ったように、流れていく
「・・・これは・・・?!」
煙管もその様子を目にしていた
やがて、円の中で赤い塊がコポコポとできはじめる
その様子に二人が目を見張っていると、
親指ほどの小さな形ができてきた
「これは・・・」
「・・・鈴・・・」
湖の流れ出た血液が、円の中で赤い猫になっている
「・・・まるで・・・あの子のようだ・・・」
煙管が言ったあの子には覚えがあった
白粉のこども
あの子猫だ
ばぎっ・・・だぁああんッ・・・!!!
突然林の向こうから、木々の倒される音が響いた
「きゃぁ・・・っ」
湖は、驚いて耳を塞ぐ
煙管は、湖を守るようにその身に覆い被さった
寺が揺れ、木片がばらばらと降ってくる
「な・・なに・・・?」
青ざめた湖を見て、煙管は壊れた壁の隙間から外を見た
そして、その場に縫い付いたように固まってしまう
「・・・お・・」