第13章 化け猫と私
「白粉は・・・私たちはあの日に本当なら死んでいました・・・彼女から貴方に助けて貰ったと聞きました・・・なのに、こんなことになって・・・申し訳ありません」
その場には近づかず、近づけようとせずに煙管が湖に言った
ぶんぶんと、首を振る湖の足下には、ぽたぽたと水が落ちる
「・・・白粉は、あなたたちの言う物の怪です。その物の怪が、式神になってしまった・・・おそらく、手がつけられない化け物に・・」
「っ・・・」
目の前にいる白粉はもう事切れていた
体は、丸い円に星のような形が書かれた紙の上に置かれていた
その前には不気味に光る鏡
「あの鏡から不快な力を感じます・・・あの紙の上に置かれた者を式神にするのか・・・かすかに白粉の気配も残っています・・・」
「・・・ひどい」
「・・・彼女の願いは、子と同じ場所に埋められること・・・白粉が、私を封じた時にそう言っていました・・・復讐より、我が子と一緒に居たいだけ・・・それだけです・・・」
煙管が、苦しそうにそう呟く
(・・・ひどい・・・こんな仕打ち・・・)
涙を擦るように拭き取れば、湖は白粉の方へ歩き出す
(あそこから、白粉を出してあげよう・・・)
円に近づき、手を伸ばすが・・・
其処は見えない壁のようなものが合って、白粉に手を伸ばすことができない
「・・っどうして?!」
どんっと見えない壁を拳で叩たいても、それは変わらなかった
壁を触るように煙管が手を伸ばすが、コツンっと音を立てやはり白粉へは手が届かない
鏡だけが怪しく光っている
(どうなってるの・・これ・・・)
どこからも円の中には、手を伸ばせそうにない
湖は視界が潤んで来るのをぐっと堪えて、なら・・・と鏡に手を伸ばそうとした
「っ駄目です。触っては・・・ッ」
それを煙管が、湖の前に立つ
「っ・・・でも・・」
(あれが、怪しい・・・あれを壊せば・・・)
「先ほども言いましたが、あの鏡には不快な力を感じます。私のような付喪神とは異なる・・・長い間道具として使われず、忌み嫌われ・・・ただの悪意の塊のような・・・そんな物に触れては何が起こるか解りません」
「だけど・・・っ」
「貴方には、待っている人が居るのでしょう。彼女のように・・・なってはいけません」