第13章 化け猫と私
「そうですね、貴方はあれを私が求めていることを知って、しつこいくらい忠告してくれました・・・あれを手に入れられたことに関しては、織田信長に感謝している・・・」
くくっと、笑いを堪えるようにゆがむ男の顔は人間の顔とは思えなかった
「あれらは、手に入れた力の試しですよ・・・だが、もう時は満ちた。今夜、あの魔王の首を手に入れましょう・・・貴方へのせめてもの感謝の印に・・・」
「・・・鏡に飲み込まれたか・・・俺は、このような形で恩を返されたくはない・・・」
「再会の挨拶はすんだか?」
黙って話を聞いていた政宗が口を挟む
「・・・お前は・・・伊達政宗・・・」
僧侶の金色の瞳が政宗を捕らえた
獲物を決めた蛇のように
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「はぁ・・・はぁ・・・」
裸足で林を走る女が一人
湖は、城を出て先ほどの寺へと走っていた
(絶対、あそこに白粉がいる)
先ほどの亭主は、自分を煙管の付喪神だといった
今は、煙管に戻って湖の懐に収まっている
煙管が破損していることで、長い時間は人の姿を保てないようだった
「・・・ここ・・だ・・・」
寺の前で息荒く足を止めた湖
生暖かい空気が寺を囲むように漂っている
ゴクリと唾を飲み込むと、寺敷地へと一歩一歩その身を進めた
さびた寺は、柱も折れている箇所があっていつ倒壊してもおかしくなさそうだった
その中は、夜だというのに其処だけが白く光の漏れている
湖は、静かに其処を覗いた
「っ・・・お、しろぃ・・・」
其処は、なぜか明るい部屋でその中央に身体を真っ赤に染めて寝転ぶ白猫の姿と、光を放つ薄緑色の縁の鏡が置いてあった
血の量、そして微動だにしない身体に湖は震えた
(もう・・・これは・・・)
「遅かったですか・・・やはり、こうなりましたか・・・」
いつの間にか懐を出てきていた
そして人の姿でその変わり果てた姿を悲しそうに見つめる