第13章 化け猫と私
小さな社の中に、古ぼけたそれはあった
赤い紐で縛られた煙管
確信は、無いがこれが白粉のいう大切なものなのだろう・・・そう思った
煙管を咥え、政宗の所に戻ろうとすると
今度は首根っこを捕まえられ、ぶらんぶらんと持ち上げられる
「お前、いい加減にしろっ!この・・・ッ心配させるなっ」
ビクリと、毛を逆立て驚く鈴に舌打ちをすれば、政宗は無言のまま歩き出す
湖もそこからは、政宗の心配が解ったのか黙っていた
(ほんとは、今すぐ・・・行きたい・・・でも・・・)
ちらりと政宗の表情をのぞき見ると、本当に心配しているようで動けない
(・・・人に戻って、政宗に説明してから・・・もう一度行くから・・待ってって・・・)
にゃぁ・・・
小さな鳴き声が漏れれば、政宗は湖を持ち替えその額を撫でた
「少し黙ってろ」
賑わう城下を通り抜け、安土城へと足を向ける
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同時刻、湖が去った廃墟の寺では・・・
「約束の時間だ・・・」
ぎらりと、光る刃物
【・・・良いだろう】
白粉は、その身を僧侶の方へと進める
これからどうなるのか、すべて知った上で
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てっきり部屋に連れ戻されると思っていた湖が運ばれたのは、人気の無い座敷牢
其処に、下ろされ政宗を見上げれば、何かを探している様子
ちりりん・・・りん・・・
猫が首を傾げれば、首後ろにつけられた髪飾りが音を上げた
「・・・お前の持ってるそれが丁度いいか・・・」
政宗は、湖が加えていた煙管から赤い組紐を外すと、それを鈴の身体の首へ結び、もう一方を柱へと結んだ
(・・・これ・・・)
まるで、首輪のような
「・・・ここで、じっとしていろ」
政宗が目を細めて湖を見ると、部屋を出て行こうとする
(まっ待って・・・!)
「にゃぁ・・!」
「・・・あの寺・・・血の匂いがぷんぷんする・・・あそこに、あの猫がいるんだろ?俺は様子を見てくるが、お前は絶対に来るな」
(やだっ・・・置いてかないで・・・っ!)