第13章 化け猫と私
「・・・」
「報告は終わった・・・俺は、その僧侶についてもう少し探ってこよう」
立ち上がる光秀に三成が声を掛け止めた
「光秀様、もう一つ確認を・・・生け贄にされた動物は、どういう状態で見つかったのでしょうか?」
「心の臓をえぐられ血まみれだったと聞いたが・・・どうした?」
革袋から子猫を出し手のひらにのせると、三成は続けた
「では、この子猫は生け贄ではない・・・」
子猫は血を抜かれてはいるが、それ以外の傷は残っていなかった
「心の臓を取られていない・・・湖様の夢の事も踏まえれば、生け贄として狙われているのは・・・」
「白粉か?」
「おしろい?」
政宗が、白粉の名を出せば家康が、なんだと反復した
「おそらく、母猫です。母猫を仕留め損ね、湖様に拾われた。それを知って、子猫を持って現れた・・・のかも知れません。もしくは、最初から信長様狙いで、逃がした生け贄を探しているから、三日後と時間を取った可能性もあります。いずれにせよ、母猫が狙われているのは確実かと」
「なるほどな」
光秀が、頷けば
政宗と秀吉が、猫を探しに出て行き
三成は、勘解由小路について調べる為、書庫に
家康は、残って湖の見張りと看病となった
その日、とうとう白粉は見つからなかった
そして、湖はただただ悲しげな白粉の夢を見ていた
湖が風邪をひき寝込んでから二日たった
「・・・うん。熱は下がった・・・身体は・・・」
「痛いところも、だるいとこも無いよ。あの・・・私、白粉を探しに・・・」
湖は、城に僧侶が残した言葉を・・・三日後に信長の首を取りに来ると言っていたことは知らない
ただ、いまだ白粉が見つからないことは、時折顔を出す政宗から聞き知っていた
「本当は止めたいけど・・・あんた、止めても聞かないでしょ・・・」
「っ家康!」
「いいよ。ただし、一人にはならない事」
「っ、ありがとう」
思わず、家康に抱きつくとタイミングを見計らったように襖が開く
「湖、家康相手に色仕掛けか?」
政宗の声がすると、家康は湖の頭を押して身体を離す
「っ、そんなんじゃないですよ・・・政宗さん、湖が猫を探しに出るそうです」
「お前・・・許したのか?」
「どうせ、言ったって聞かないでしょ・・・」