第13章 化け猫と私
その頃、湖は夢の中で白粉と会っていた
夢の中の白粉は、話をする
人と同じ言葉で
「礼を言う、娘さん。おかげで助かった・・・動ける・・・」
「っ駄目だよ!あんな傷で動いたら死んじゃうよっ!」
「構わない・・・私は、あの男を殺さなければならない」
「殺す・・・?」
「我が子を殺したあの男・・・その上、革袋にその骸を入れ持ち去った男・・・探して殺さねば・・・」
「っ・・・赤ちゃん・・・殺された?!じゃあ、貴方の傷も・・・」
「私は良いのだ・・・この身は問題ない。我が子の敵を・・・」
「っ待って!」
追いかけようと走っても、白粉は止らない
どんどんと遠ざかっていく
「っ・・まって・・・」
はぁはぁ・・・と息を浅く吐きながら、湖が目を覚ます
部屋は薄暗く、障子が赤く色づくところを見れば日の入りなのだと解った
片手をつき、体を起こせば
シュッと襖が開き、三成と政宗が入ってくる
「起きてたか、湖」
「汗をかかれていますね・・・今、着替えを・・・」
「いい・・・私、白粉探しにいかなきゃ・・・」
蒼白な顔をし起き上がろうとする湖を政宗が肩を掴み止める
「湖、待て」
「湖様、私たちは今日、あの茶屋へ行って参りました」
「っ!・・・白粉は?戻ってた?!」
三成は首を振った
「いや、戻っていない・・・」
「じゃあ、子猫は?ちゃんと居た?」
「湖様・・・、母猫も子猫も姿を見ることはありませんでした。亭主も・・・どこに行ったのか・・・」
三成の歯切れの悪い口調に、湖は三成と政宗の顔を交互に見た
「え・・・じゃあ茶屋は・・・?」
「茶屋は浪人か山賊に荒らされたようです・・・立ち寄った客に聞いたところ、僧侶が茶屋に寄っていたのを見て、その帰りには茶屋は荒らされ亭主も猫たちも居なかったようです」
「っ、荒らされたって・・・」
「あぁ、店もひどい有様だった・・・」
(まさか・・・あの夢・・・)
「政宗、三成。戻っていたのか・・・ちょっと来い」
秀吉が現れ、彼らを見つけると声を掛けた
「どうした?」
政宗が立ち上がると、秀吉が怪訝な顔をして話す
「ちょっと妙な客が来てな・・・不気味な袋を置いて行った」
「・・・袋ですか?」
「あぁ。革袋だ」
(・・・革袋・・・っ、嘘・・・)