第13章 化け猫と私
「では、まず。茶屋に行ってみましょう」
「そうだな・・・俺は、この後、信長様と共に用がある。三成・・・頼めるか?」
「もちろんです」
「俺も行く。亭主に話さなきゃいけないだろうからな」
「・・・俺は、薬の用意をしておくよ・・・わさび(鹿)に使った薬がまだあるから・・・」
ぐっすり眠る湖を残し、四人は部屋を出て各自向かうべき場所へと足を向けた
「で、湖はどうした?」
「大丈夫です。ただの風邪です」
近隣の武将が訪れていた今日、信長は挨拶を受けるため大広間で胡座を掻き座っていた
丁度区切りが付いた頃、秀吉に湖の様子を聞く
「越後から帰って、しばらく大人しくしていたと思っていたが・・・やはり、何をしでかすか解らん娘だな、湖は」
「猫を助ける為・・・というのは、湖らしいです」
「そうだな・・・あやつらしいな・・・」
フッと口元を緩める信長
其処へ襖を開ける音も無く、一人の僧が立つ
目の前に居るのに、気配がない
っちゃき・・・
秀吉が、その姿を捕らえ刀を抜き、僧に差し向ければ
深く傘の被った僧は、懐から革袋を取り出し、ボタリと下に落とした
【織田信長・・・お前への贈り物だ・・・本日より三日・・・新月の夜に、お前の首・・・貰おうぞ】
「っ貴様・・・」
秀吉が、その僧に斬ってかかるが刀は宙を斬るように音を立てた
そして、僧の姿が消えた
残ったのは、革袋
そして、ひらひらと畳に落ちる白い紙
「・・・・・・」
信長は、落ちているそれを黙って見た
「っ・・・あいつ、一体・・・」
秀吉がそれを拾おうとしたとき
シュッ・・・
声がけもなく襖が開き光秀が入ってくるのだ
そして秀吉が引き抜いた刀と、畳に落ちている小袋を見て入って「なるほどな・・・」と一人頷いた
「っ、光秀!お前、また黙って消えてただろうっ」
「・・・何か持って来たか」
「はっ・・・悪い噂を1つ・・・」