第13章 化け猫と私
「本当に見事な白だなぁ」
「おい、三成。猫がいるぞ」
政宗が声をかけても、三成は顔をあげない
「政宗、三成は動物に興味がない。無駄だぞ」
「はぁ?鈴を可愛がってるだろう?」
「あーぁ、あれは…鈴は別だ。湖と鈴は同等だからな」
「??」
(意外…三成くん、鈴のことたくさん話してくれるから、小動物好きかと思ってた)
三成の意外な面を知り、鈴は特別なのだと知った
「白粉って名前なんです。真っ白だったので、主人がつたけたのです」
「おしろい…ぴったりだね、美人さんだもの」
「この猫の飼い主は貴方じゃないのですか?」
それまで本を読んでいた三成が顔をあげた
「聞いてたのかよ、お前…」
「あ…耳には入っていたので…今のは気になって」
「…三成、お前…政宗を怒らせるなよ…」
「は?政宗様を…?」
政宗たちを横目に湖が亭主を見れば、目があった亭主が話し出す
「白粉の主人は、ずっと昔に亡くなってるんです。私たちはその後、一緒に各地を転々と回っているんです」
「そうだったんですか…」
白粉が、薄く目を開くと湖をみて1つ鳴いた
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それから数日経ったある日
信長のお使いで金平糖を買って帰る途中で、湖は気づいた
すぐ横を通る川に流れてきた白いものに
とさっ…
持っていた金平糖を落とすと、川岸に駆け落り、流れていくそれを追う
ちょうど別用で通りかかった政宗は、そんな湖を見つけ何事かと駆けつけた
政宗が川岸に降りたときには、湖は川に入ってそれを掴んだところだった
「湖っ‼なにやってる⁉」
「っ、政宗っ‼お願いっ、お湯用意して‼」
湖が抱えた白い物は猫
あの茶屋の白粉だった
辛うじて息をする白粉には矢が刺さり、耳が片方切られていた
真っ赤にそまる頭の毛
ほかにも刀傷のような痕があった
止血をし、湖は政宗の御殿へ湖を連れ帰ると、家臣の一人にお願いし、止血布などを用意して貰った
(とにかく・・・止血・・・それから、大きな傷は縫わなきゃ・・・)
丁寧に早く処置を行う湖に、政宗は目を見張った
(・・・こいつ)
湖の処置は適切で丁寧
血が付くことも気にせずに、猫を処置する湖はひどく苦しそうな表情だった