第13章 化け猫と私
政宗に連れられ城下に出て、団子が美味しいという茶屋へ連れてきてもらえば、そこには先客がいた
「秀吉さんに三成くん」
「お…湖に政宗、散歩か?」
「団子を食わせようと思って来たんだが…お前たちはどうしたんだ?」
「秀吉様のお知り合いの住職のところへ伺うので手土産を・・・と、立ち寄ったのです」
茶屋で偶然出くわした二組は、席に着くと茶を飲んだ
「ここのお団子有名なの?」
「いや、まだだ」
まだ…とい政宗の言葉に首をかしげれば、秀吉が説明し始めた
「俺も政宗からここを聞いたんだが、まだ出来て程無いんだそうだ」
「これから有名になる…という事ですね」
三成は団子を一かじりしつつ、持っていた書物を開こうとする
「おい、三成。食うときに本を読むのは止めろ」
「え…?」
いつものやり取りを、クスクスと笑いながら見ていた湖も団子をかじる
その様子を三人が見守るように見ている
もぐもぐと、頬張りながら口元に手を運ぶ湖
「…美味しいっ」
焼いた餅に醤油の香り
出汁の香りもする
「だろ、醤油だしで鰹節が効いてる」
「あ、鰹節なんだ。鈴が喜びそう」
「おいおい、猫は団子なんぞ食わないだろう」
政宗の説明に納得して答えれば、秀吉が笑いながら加わる
そして三成は、開いた書物にもう集中してしまい耳に入っていないようだ
「あ・・・三成くん・・・」
湖は、三成の口元についた醤油を手拭きで拭くが、それにも気付かない様子
「ふふっ、三成くん、相変わらずだね」
「…三成のやつ、得してるのか損してるのか解らないな…」
「全くだ」
そんな様子を見ていた政宗と秀吉が談笑する
「気に入ってもらえましたか?」
そこへ声をかけて来たのは、若い男
政宗から店の亭主だと教えてもらう
「最近出来たばかりな上、こんな外れにあるからなかなか噂も広がらないんだ」
「いいんですよ、暇なくらいで。食べるに困って居ませんから」
にこりと笑った亭主はとても穏やかに見える
「どうしてこんな外れにお店を?」
湖が聞けば、穏やかな笑みのまま
「このひとがこどもを産んだばかりで気がたってるので」
優しく見つめる先には母猫と子猫
茶屋の隣にある小さな社で日向に当たっていた
「キレイ…真っ白…」
ほぅと息をつけば亭主は嬉しそうに湖を見返した