第12章 私を待っていた彼は(裏:安土組全員)
■政宗編 『繋がる思い』■
「湖、いいか?」
政宗が、訪れたのは夜のこと
湖の部屋には、灯が灯っていない
(寝てるか・・・)
すっと襖を開けば、やはり眠っているようだった
灯を灯して確認する
「・・・のんきな顔だな」
羽織を掛けられ、仰向けでぐっすり眠る湖
安土に着き宴会後、眠たそうに部屋に戻っていったので寝ているとは思っていた
それでも、彼女の顔を見て起きたかった
だから政務が終わってすぐに部屋に訪れたのだ
すぐ側に座って、頬を撫でる
「ぅ・・ん・・・」
くすぐったいのか、横を向く湖
信長の送った髪飾りが、ちりりんと鳴った
(・・・髪型を変えたんだよな・・・)
よく見える横顔、そして首筋
横を見たことで、見たくも無い襟奧の赤い花もちらりと見える
(・・・っくそ、やっぱり腹がたつな・・・)
「謙信のやつ・・・」
そう政宗が呟けば、反復するかのように湖が声を上げた
「・・・謙信さま・・」
「・・・っ」
呟いて花のようににこりと笑う湖
一体どんな夢をみているのか
(まさか、謙信に・・)
「む・・・やぁ・・幸村・・・いじわる・・・」
眉をしかめ、むにゃむにゃと怒る湖
ふっと笑ってしまい、口元を押さえる政宗
(無いな・・・こいつが、二ヶ月なんて短期間で・・・まぁ、謙信には手を出されたようだが・・湖が許していたんじゃ・・・ないだろう・・・)
「佐助くん・・、信玄さま・・・だめです・・よ・・・」
黙って聞いている政宗だが、徐々に眉間にしわが寄ってくる
(こいつ・・・起きてないよな・・・)
男の名前、それも上杉方の男の名前ばかり聞かされてくる内に腹が立ってくる
「・・・政宗」
政宗は、自分でぽつりと自分の名前を言った
すると・・・
「・・・政宗・・・」
ぽそっと湖が呟いたと思えば、頬を涙が伝っている
(・・・湖?)
「ごめん・・・」
思いだしているのか政宗は気づいた
(こいつ・・・あの時の事・・)
崖から落ちたときのこと
あの時の湖は、何か言っているようだった
『ごめん』
そう言いたかったのかも知れない
「・・・謝るな・・・」