第12章 私を待っていた彼は(裏:安土組全員)
ガッと、秀吉は光秀の襟元を握り引く
「お前っ・・・湖に何をした?!」
「何をした?・・・何かしたのは、湖の方だ・・・」
(っ止めて・・・)
「・・・どうゆうことだ?」
「秀吉、湖は上杉謙信に身体を許したそうだ。本人から聴取済みだ」
「・・・っ」
どくん、どくんっと、心臓が跳ねる
光秀が、秀吉に事実を話したせいか、それとも光秀にされた何かのせいか
「ッ・・・だが・・・記憶がなかったんだ・・・」
秀吉が自分に言い聞かすように言葉を絞り出す
「だが、今は上杉に居た際の記憶がある」
「湖を女にした上杉謙信が、このまま放っておくわけないだろう」
「・・・どうしろと言うんだ・・・」
「簡単だ。あちらが湖を覚えていたとしても、湖が上杉謙信を忘れれば何の問題も起こらない」
(何を・・・言ってるの・・・?)
「四半時ほど前に、湖には南蛮より渡ってきた薬を入れてある」
「っ・・・何の薬だ」
「緑鴬膏のようなものだが、効果はそのものを何倍もするらしい・・・ただし、使用度によっては記憶障害に陥る場合もあると」
(・・・うぐい・す?)
聞き慣れない言葉だ、まだどうにか耳に入る言葉を拾う
「っ・・そんなものを与えたのか?!何かあったら・・・っ」
「命に別状はない。それより、続きを聞け・・・使用したものの話を聞けば、数ヶ月分の記憶が失われたそうだ。湖に越後の事を忘れさせるには、丁度いい薬だろう」
「お前っ・・・」
「もし、上杉が湖を攫っていったら・・・お前、湖を斬れるか?」
「っ・・」
「今回の事は、一部を除いて内密になっている。湖は湯治で不在・・・そうだったな・・・だが、上杉が正面から来て湖を攫っていけば・・・今回の事が知られれば・・・湖はこちらにとって消さなければならない存在になる・・・俺たちは良くとも、家臣達がなんと言い出すかは解らんぞ・・・裏切り者の姫が間者であった。早く亡き者にしろ・・・そんな輩が出てくるとも限らん・・」