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【イケメン戦国】私と猫と

第12章 私を待っていた彼は(裏:安土組全員)


■家康編 『詫び』■


女中が出て行ってほどなくして湖の部屋に家康が訪れた

「湖」

外から声を掛けても返事はない
が、室内から衣擦れの音が聞えてくる

「・・・入るよ」

襖を開くと、寝返りでうったであろう湖の姿があった
はぁ・・・とため息しつつ部屋に入り襖を閉める

「無防備・・・」

湖を見る家康の顔は穏やかで、静かに彼女に近づき
その場にしゃがむと、髪をすくった

「・・・湖」

前髪をすくい薄く残っている傷跡を確認する

(あの日・・・)

湖が崖から落ちたあの日
急に山賊に襲われ囲まれた
家康と政宗の背で隠すように湖を守っていた
だが、数の多さに数人が湖の方へ
湖に逃げるように言ったのは家康だった
彼女の乗馬の腕は、その辺の者より達者だと認識していたからだ
馬に乗れば、戦えない湖でも逃げ切ることは出来る
湖は、すぐに馬に跨がって駆けだした
その湖を山賊の一人が、側の馬に跨がって追った
少なくなってきた手勢を引き受け、政宗に湖を任せ、その場に片をつけてから後を追った
そして・・・
政宗を追いかけて、あの断崖にたどり着くと
倒れている山賊と、断崖を覗き込むように湖の名前を叫ぶ政宗

(あの時・・・「逃げろ」と言わなければ・・・そのまま側に置いておけば・・・)

山を下れば、次々と見つかる湖の着衣
落ちている最中に猫の姿になったであろう事は推測出来た
見つかるまでの間のあの感情、初めて抱く感情だった

(・・・湖を見つけても・・・連れ帰る事ができなかった)

佐助に連れられ、謙信に保護された湖を見た際
心臓が凍りつくかと思った
生きている事が不思議な位に弱り切った猫
あそこから落ちて、生きていた
鈴もどれだけ恐ろしい思いをしたのか・・・

前髪を下ろせば、湖が薄ら目を開いた

「・・・」
「いえ・・・やす・・・?」

寝ぼけた様子の湖に、家康が苦笑する

「ごめん・・・邪魔したね」

立ち上がろうとするのを湖が着物を引き、引き留めた

「ま・・・まって」
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