第11章 安土への道
宿で食事になり昼過ぎ
三成が説明した通り、一行は安土へ向け移動を始める
湖は、家康の馬に乗っていた
「治ったとは言え、まだ確認が取れていないから・・・政宗さんの馬じゃ危険だ」
と言い、家康が湖を自分の馬に乗せたのだ
「もう治ったよ」
「安土で診察させてもらうまでだから」
「・・・家康、心配性だね」
くすりと笑う湖に、家康は「そうだね」と素直に返す
意外な返事に驚きながらも、その心配が嬉しく湖も素直に従った
宿から安土までは、少々馬を走らせることもあったが、そう時間が掛からずに到着した
城の門の前には、懐かしい信長と秀吉の姿
それに数人の家臣や女中の姿もあった
「っ、湖様!!お帰りなさいませ!」
一番仲良くしてもらっている女中が一声を放てば、いろんな声で帰りを待っていた事を知らせてくれる声が上がる
湖は、驚きを隠せず、それでも嬉しそうに涙を貯めながら
「ただいま戻りました」
と微笑んだ
そして、信長と秀吉の元へ馬を降り駆け寄ると
「信長さま・・・秀吉さん・・・ただいま戻りました」
と、瞳から涙を零しつつ笑って見せる
「良く戻った。皆も大義であった」
「お帰り!湖!」
あの信長様の笑み、強く自信のある笑みを見るのは久しい
そして、秀吉が頭を撫でてくれるちょっと恥ずかしいけど、嬉しい対応
「はいっ!」
何もかも嬉しくて「ただいま」が言えたことに安堵する湖
その湖を抱えると、信長はそのまま天主に向かって歩き出す
「の、信長さま?!」
「まずは、首輪をし直せばならんな・・・勝手に出歩きおって」
懐から髪飾りを出すと、それは懐かしい音を立てた
ちりりん・・、りん・・・
今まで忘れていた鈴の音に、湖は驚いた
「・・・もう・・・落としませんね」
「そうしろ」
信長に続き、武将達も「宴だ!」と言い歩いてくる
今夜は長い宴になりそうだと、湖は覚悟を決め嬉しそうに笑っていた