第11章 安土への道
柔らかい天使のような笑みで、そう言われると、やはり先ほどの見たこと無い三成の笑みが気になるところではある
だが、昼まで此処でゆっくり出来る
なおかつ、彼らが聞きたいと言うのであれば・・と、おずおずと湖は話を続けた
「えっとね・・・」
すっかり涙の引いた湖が話し始める
目が覚めた際には、春日山城ではなく、謙信の領地内の城で数日世話になっていたこと
そこから越後に渡って、しばらくは敵国の姫と警戒され、また信玄や謙信に加護去れ過ごしていたこと
怪我が良くなって、落ち着かず女中の仕事をして回っていたこと
その内に、城内の者と少しづつ距離を縮められた
そして、謙信や信玄、幸村、佐助にすごく世話になったことなどを、湖は話して聞かせた
「そうでしたか・・・その間、記憶が戻る事は無かったのですね」
「うん・・・でも、夢は見てたよ・・・誰かが「迎えに来た」って来てくれる夢・・・三成くん達だったんだね」
にこりと微笑むと、三成は薄ら頬を染めた
それに気づかせないように言葉を出す
「では、記憶が戻った切っ掛けは・・・あの大井戸の場所でしょうか?」
「・・・ううん・・・幸村と出掛けた時・・・私、三成くんに会ったでしょう・・・その時、知ってる人だって思ったの。そしたら、やっぱり私は記憶がポッカリ空いてるんだ・・・て気づいて・・・それが切っ掛けかな・・・」
少し考えて、湖は四人の顔を見た
「はっきり思い出したのは、皆の顔見たときだけどね」
そして、ふふっと静かに笑う
「どうしましたか?」
「ううん、本当に記憶喪失だったんだなぁ・・・て、今更実感してるの」
それが、どうして笑うことなのか三成には理解出来なかったが、湖が自分の前で微笑む姿は安堵する以外の何でも無かった
「湖、謙信とはどうゆう関係だ」
黙っていた光秀が、湖に声を掛けた
「どうゆう関係??・・・すごくよくしてもらったよ。謙信さまのおかげで、色々・・・怪我もだけど、自由にしてもらって、お出かけもよく連れて行って下さったし・・・たくさんお話もして、いつも側にいてくれたよ」
「何時もね・・・」
政宗が、はぁとため息をついて繰り返した
「政宗?」
「寝たのか」