第2章 目覚めの一日
「これのせいでしょう」
三成は懐から、懐紙に入れた煮干し見せた
「昨日、話には伺っていたので念のため持ち歩いて居たんですよ。何かあれば役立つかと」
だが、鈴は煮干しに向かわず三成の懐に顔をいれる
「あぁ、食事は先程湖様が済まされてましたね…こちらでしょうか?」
もう1つ懐紙をだし広げると枝が出てくる
その枝をフンフンっと嗅ぐと三成の膝で枝を抱えるように喉を鳴らし始めた
「なんだそれは?」
「またたびという木の枝です。個体に違いはあるようですが、猫はこの匂いに酔ったようになると書物で読みましたので」
三成が答えていると、バタバタと走る音が聞こえ外から秀吉が信長を呼んだ
「入れ」
襖を開け、状況を見て一息つく
「どうした」
信長の問に
「光秀から湖が屋根に上がったと聞いて…足でも滑らせたらと思ったのですが…そうゆうことか」
はぁ…とため息をし三成の横に座る
「湖が屋根に上がるなど、そんな真似はあれには出来ないだろう」
「秀吉様、湖様はそんな方ではないでしょう」
二人の言っている意味は大きく違うが、どちらも合っている
ゴロゴロ、グルグルと喉を鳴らす猫を見て
「まぁ無事ならいい…だが、これはどうす…!」
「…?!」
「…酔って猫が消えたか」
ばさりと、湖が着ていた着物を投げ掛けると「なるほどな」頷く信長
「…湖は間者ではないな…こんな娘では危なっかしく間者には出せないな…三成」
秀吉は信長が投げ掛けた羽織を直しつつ三成に問いかけたが返事がない
三成を見ると湖から目をそらし顔を掌でおおっていた
「くくっ…猫になった湖には動揺を見せなかったが、人に戻った際には流石に動揺したか」
人の悪そうな信長の笑みに
「…左様でございますね…」
と、体勢を変えないまま三成が答えた
湖は、またたびの枝を握って三成の膝を枕に気持ちよさげに寝ていた