第10章 敵陣の姫 第三章(裏:謙信)
「ったく、心配したぞ・・・悪かったな・・・湖・・・」
「政宗・・・ううん、私こそ・・・心配かけてごめんなさい」
「全くだ。お前のおかげで、ここしばらく休養がなかった」
「すみません、光秀さん」
「皆さん、湖様が無事で安心しているのです。本当に良かったです」
「三成くん・・・」
「戻ってくれて、良かった・・・」
「家康・・・」
四人それぞれから声を掛けられる
その様子を、謙信は目を細め見ていた
また信玄も謙信の横に立ち、様子を見ていた
「・・・さっさと、立ち去れ・・・今は追わぬが、以降目に入れば叩き斬る・・・」
「だそうだ・・・すぐに行った方がいい」
「謙信さま、信玄さま・・」
本丸へと引き返す四人だったが、信玄がふと振り向くと、誰ともなく声を掛ける
「そうだ、湖は、上杉謙信の側室になったぞ」
まるで、子供がいたずらをするような顔でそう言った
「「はぁ?!」」
「「・・・」」
「・・・え?」
織田側の動きが一瞬止る
「・・・あぁ・・・そうだな、湖は我妻だ・・・近々攫い返しに行くことにする・・・」
謙信が笑みを浮かべると、度こそ四人は城へと歩き出し去って行った
「・・・湖・・・、謙信と何があった?!」
政宗が、湖へと詰め寄る
「へ?!」
「湖様・・上杉殿と夜伽を・・・」
「ちょ、ちょっとまって!三成くん・・・なんで刀に手を掛けてるの?!」
「もし、本当なら、相手を葬るに限るからな・・・」
「っ、怖いこと言わないで下さい!光秀さん!!」
次第にヒートアップしそうなその場に、煙玉が爆発し佐助がその場に降り立つ
「お忙しい所を恐れ入ります。もうしばらくすると、知らせを聞いた城内の者が、姫を返せと攻めてくると思います・・・どうぞ、続きは道中にて・・・それと、謙信さまより伝言です。今回は特別に捕らえた間者も解放すると・・・すべては湖さんの為に。とのこと。湖さん、いい旦那さんを持ちましたね・・・では、これにてドロンです」
「へ?!佐助くん??旦那さん??へ・・・え??」
「そうですね。今此処での詮索は、無用・・・すぐに越後を出て領内に戻りましょう」