第10章 敵陣の姫 第三章(裏:謙信)
「上杉謙信っ!」
「・・・やはり現れたか・・・独眼竜、それに石田三成に徳川家康か・・・」
独眼竜と呼ばれた青い着物の男は謙信を睨み付け、刀に手を掛ける
謙信もまた湖を後ろに隠し、刀に手を掛けた
「湖さん、遅くなってごめん」
佐助が、湖に声を掛けるとすぐに後ろから信玄と幸村の声もした
「やはり乗り込んできたか」
「此処に来たからには、その首もらったぞ」
幸村が刀を抜く音に、湖は心臓が冷えた
(やめて・・・)
声に出ないが、湖はその場に立ち尽くしながらもそう願った
「三対四か・・・光秀の奴、どこ行ったんだ・・・」
「さぁ・・・あの人の考えることはわかりません」
「しばらく待てば来られますよ」
対峙する政宗、家康、三成もそれぞれ刀が抜ける用意ができている
「佐助、お前は湖を守れ」
「はい」
謙信の声に、全員が動き出した
謙信と家康、信玄と政宗、幸村と三成が刀を交える
ザッ・・・、キンッ・・ザザッ
巻き上がる土煙に、金属音
そして、知っている顔が刀を目の前で交える
頭痛は治まることなく、ひどくなる
それでも、顔を上げ前を見る湖はひどく悲しい顔をしていた
「・・・湖さん」
佐助は、そんな湖を見て目を細めた
声を掛けようとすると、後ろに気配を感じ小刀を抜き襲ってきた刀を払う
ガキッ・・シュッ
「っ・・・明智・・光秀・・・」
「さすがだな、今のを避けられるとは思わなかったが・・・」
涼しい顔で、刀を構える光秀
湖は、振り向くとその顔を見る
(・・・みつひで・・・さん・・・)
「どうした?湖・・・苦しそうな顔だな」
そんな言葉を掛ける割には、涼しそうな顔をした光秀は佐助に目を戻すと
「お前の相手は、俺がしよう」
そう言い佐助に刀を振る
佐助は、湖を後ろに押すと、光秀の刀を交し湖から距離を取る
押された湖は、一組あらわに加わった争いを震えながら見つめた