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【イケメン戦国】私と猫と

第10章 敵陣の姫 第三章(裏:謙信)


信玄に送られ、部屋で床についたものの、頭痛と浅い眠りで湖は休めずにいた

(なにか・・・なにか大切な事・・・私、忘れてる・・・)

助けてくれた紫色の着物の人・・・あの笑み、声
どれも懐かしいという気持ちで、涙が溢れそうになった

ずきん・・・

最近、夢に見る「迎えに来た」という、優しい声は誰だろう

ずきん、ずきん・・・

(私の居場所はどこ・・・?ここじゃないの?)

ずきん、ずきん、ずきんっ

「・・・痛い・・・」

羽織にすっぽりと丸まり、外から見えない湖の背中を優しく摩る手があった
その体温に少し頭痛が収まり、顔を外に出せば

「・・けん、しんさま・・・」

謙信の姿がある

「・・・痛むのか?」
「・・・はい・・・」

訳もわからない涙が溢れる

「はい・・・痛いです・・・」
「・・・そうか・・・」

髪を優しく整え、謙信は湖を抱き上げると膝の上で抱え、軽く抱きしめた
次から次へ大粒の涙が零れていく
しばらくすると、湖は泣き疲れて寝てしまった

「渡せん・・・な・・・」

当初、謙信は湖が記憶を取り戻し、織田の元へ帰ることを望めば返すつもりで居た
だが、二ヶ月ほど
たった二ヶ月だが、一緒に居ることで手放せなくなっていた

「すまないな・・・手放すことができそうにない・・・」

こんな事、湖の意識があるときには言えない
だが、今は自然と口から出てしまう
誰に聞かれていても・・・

「手放せないのは、お前だけではないさ。俺もこの娘を余所へはやりたくない。ましてや、織田の元になんて、ごめんだな」

信玄が、襖の外から声を掛けてきた

「・・・そうだな」

謙信は、湖を褥に寝かせると、襖を開け信玄と共に移動した

「さて・・・どう来るかな・・・織田の小童達は・・・」
「・・・」
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