第10章 敵陣の姫 第三章(裏:謙信)
春日山城に戻れば、既に幸村達が襲われた事が報告された後だった
兼続は、湖を見つけると横に抱抱きにし、謙信の部屋へ走り出す
「っお、おい!兼続っ!!」
「か、兼続さまっ??」
「姫様、ご無事で戻られよろしゅうございました!姫はしばしの間、城内でお過ごしください!」
「・・・へ?」
どかどかと、湖を抱きかかえ走る兼続に、家臣達は何事かと目を見張る者や、後を着いてくる者、声を掛けてくる者様々
「姫が襲われたっ?!」
「何者だ?!」
「湖様に手を出すなど・・・あり得ん!!」
皆様々、声を出し始めるが、謙信の部屋にたどり着く前に兼続に制され、全員が元の職に戻るよう指示された
そして、兼続、兼続に抱えられた湖、幸村、遅れて信玄と佐助が、謙信の部屋へと集まった
「まずは・・・確認が取れていることから。織田の石田三成、伊達政宗、徳川家康、この三人は確認済みです。他に、明智光秀が越後に入ったという情報がありますが、目視での確認はできていません。加えて、先ほど幸村達を襲った顕如の仲間達は、森の拠点を退く動きがあるようです」
佐助が、報告をする
(三成、政宗、家康・・・光秀・・・顕如・・・やっぱり、聞き覚えがある・・・)
その話を黙って聞いていた湖が頭に手を添えた
ずきん、ずきんと、頭が痛み出す
「織田信長・・・やはり、姫様を連れ戻しに・・・」
兼続は、ギリリと歯を合わせる
(織田・・・信長・・・さま?・・・)
いっそう頭痛がひどくなる
その様子に気づいた信玄は、湖の背中を摩るように宥めると、
「・・・湖は、部屋に戻って休んだ方がいい」
そう言い、休むように促した
「・・・湖・・・ゆっくり休め、ここに居れば問題はない」
謙信は、信玄に連れられる湖に声を掛ける
湖は、頭を押さえながらも笑みを浮かべ部屋へと戻っていった
「・・・湖さん・・・記憶が・・・」
佐助に言われなくとも、謙信は湖が部屋に入ってきてから感じ取っていた
やはり、今朝の胸騒ぎはあたったのか・・・そう思うも・・・
「問題ない。何があろうが、湖は渡さない」