第9章 敵陣の姫 第二章(裏:謙信)
佐助は、落ちていた飴細工と着物を拾うとため息をついた
「参ったな・・・」
神社に行くと、祭りの屋台が数台並んでいる
賑やかな屋台を歩き、その一つ餅菓子を買おうと並んでいると横にいたはずの湖がある一点を見て止っていた
そして、それに佐助が気づいた時には・・・
猫の鳴き声と共に、湖が消えた
人混みの中だった為、湖が急に消えたことに気づく人間はおらず
急ぎ落ちた物を拾った佐助は、湖が見ていた方向に進み猫を
鈴を探していた
一方、鈴は、フンフンと鼻をひくつかせながら何かを探してた
そして、それを目視すると其処に向かって走り出す
にゃーんっ
屋台の屋根から、飛び降りた猫を受け止めたのは、墨色の着物に紫の帯を締めためがねの男
左手に書物を持ち、右手で猫を受け止めた
「・・・久しぶりですね、鈴様」
猫は、その男にすり寄るように、甘えるように体を寄せる
男は懐から、小袋を出すと、中に入っていた鰹節を鈴の口元に持ってくる
鈴は、喜んでそれを頬張った
「鈴様は、覚えていらっしゃいましたか」
もちろんよ!そんな感じで猫は一鳴きし、男の手におとなしく収まっていた
「・・・それは、嬉しい限りです」
ニコリと笑うと、前から着物を持って掛けてくる佐助を見つける
「残念ですが・・・今日は、これで・・・お帰りお待ちしておりますよ」
鈴に、言い聞かせるように語りかけると、近づく佐助に、今気づいたかのように笑った
「っすみません、その猫・・・」
「お探しでしたか?・・・人懐こい子ですね」
男は、抱いている猫を優しく見ていた
そして、佐助に預けると
「あまりに可愛いので、持って帰ろうかと思いました」
そう言い、去って行く
鈴は、その姿を見て悲しそうに鳴いていた
佐助は、そんな鈴をみて違和感を覚えた
城に戻ると、猫を片手に謙信の元へ行き、鈴の事を話した
謙信は、膝上でごろごろとくつろぐ鈴を撫でながら話を聞き、佐助の名を呼んだ
「解ってます。あの男、調べてみます・・・」
謙信は、鈴を撫でたまま
「来たか・・・」
そう呟いた