第9章 敵陣の姫 第二章(裏:謙信)
「・・・姫様が、織田縁の姫で在ることは場内の者すべてが存じていると言っても過言ではありません。ご承知の通り、当家と織田家には因縁がございます。姫がこの場に居ることを、よく思わない者も少なく在りません・・・投獄すべきという意見も出ております」
自分の立場を覚えては居ない
だが、佐助から聞いて知っていた湖にとっては、当然言われるで在ろう事だと思っていた
また城に入る前に、佐助から話を聞き覚悟はしていた
だが、いざ初めて会う人間にそう言われると、目の前に黒い影が映るように目眩がする
それでも湖は、気丈に答えた
「はい・・・」
「・・・ですが、謙信様は姫を手元に置くと仰せです。ですから、しばらくは周りの者も手出しはしないと思われます。ご安心ください・・・」
「・・・」
(しばらく・・・じゃあ、しばらくが過ぎたら・・・私はどうなるの・・・)
兼続の話を聞き、膝の上に置いてあった手を握りしめると信玄が、それを横から攫い手を開かせる
「手を痛めるよ」
「んな顔すんな、俺たちが側に居るんだ。安心しろ」
信玄と幸村が、声を掛けてきた
兼続も湖を見ると苦笑し声を掛ける
「某と景勝様は、謙信様のご意向のままにと思っています。湖姫様には、この城にてまずは、傷の静養をされてくだされ・・・かの国の大名も、姫様を心配していると、書状をいただきましたよ」
その言葉に、熱の際、世話になった年老いた大名の事を思い出す
湖は、兼続に頭を下げると礼を述べた
「っ・・・ありがとうございます・・・」
「それに・・・おそらく、あの者の仕業でしょうが・・・」
コホンと、咳払いすると在ることを話し始めた
それは、こんな事
湖は、織田信長こと魔王に存在を忌み嫌われ、伊達政宗と徳川家康に命じ、上杉領地狭間の崖に身を投じろと命じた
伊達と徳川は、姫を命令の通りに投じ殺したつもりになっている
だが、姫は偶然通り掛かった謙信様に助けられ一命を取り留められた
姫は助かった代わりに、記憶を無くされ、またその傷は魔王の呪いを掛けられたものだと