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【イケメン戦国】私と猫と

第8章 敵陣の姫 (裏:謙信)


湖が目を開けたのは、宿場を出て三日後の事
小さな国に入ってから二日後の事である

五日程、高熱で寝込んでいた湖は気だるそうに目を開けた

(・・・ここ・・・どこ?)

横を向けば、手ぬぐいが落ち、手当てされた自分の腕が目に入る

(・・・デジャブ??ちょっと前にも、こんな景色見た・・・)

「っ・・・ん・・・」

痛む体を捻って寝返りを打てば、誰かに抱きしめられているのが解った
湖の目の前には、薄水色の着物

「起きたか?」

上から降ってきた声に、顔を向ければ印象深い瞳が目に入る

「・・・けん、しん・・・さま?」
(謙信さま・・・どうして、私・・・)

回らない頭、擦れた声
久々に出した声は、喉が焼けるようで旨く出ない

「五日間寝ていた・・・無理に喋るな・・・今、水を持ってくる」

謙信は湖を抱きしめていた手を離し、羽織を掛けると部屋を出て行った

(・・・知らない部屋・・・私、どうして・・・)

やがて、水を持って謙信が現れると一緒に佐助、信玄、幸村も訪れた
謙信に背中を支えられ、どうにか水を飲み込むがたびたびむせてしまう
そのたびに、謙信がかいがいしく背を撫でた

「いやいや・・・、そんなお前さんを目にすることができるとはね」

信玄が、珍しいものを見るように笑う

「・・・黙れ」

それを謙信が、横目で睨んだ
幸村は、開いた口がふさがらないとばかりにその光景を見ている

「幸村、口が渇く」

佐助は、薬湯を用意しながら幸村に言った

「・・・あぁ・・・」

ぽかんとした幸村の表情は変わらず、信玄はそれを見て苦笑する

「お前も、まだまだだなぁ・・・」

そんな様子を見ていた湖の体は内側も外側も強ばり旨く動かない
頭も、まだ熱が下がりきらないせいか薬のせいかはっきりせず
状況が理解できていなかった
薬湯を手渡すと、佐助はその手を湯飲みが落とさないように支えつつ湖に声を掛けた

「湖さん・・・崖から落ちたの、覚えてる?」

薬湯を飲み込めば、苦さでまたむせそうになる
すぐに水を貰い、口内から苦みを逃がす

(・・・崖から落ちた・・・?)

混乱する頭
思い出そうとすると、頭が痛む
手で頭に触れようとすると、自分の額に当て布がされているのに気づく
触れば痛みが走る
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