第8章 敵陣の姫 (裏:謙信)
すっかり朝が明け、明るくなった部屋に笑って入ってきたのは、信玄と幸村
「ついでに、化け猫の件もうまい具合に話を盛れば良かったんじゃ無いか?」
冗談交じりで幸村がそう言えば、信玄に窘められる
「・・・まあいい」
(・・・佐助の言い分は一理ある・・・織田のものを春日山城に連れ込めば・・・・少し考えねば・・・)
湖が目を覚ましたのは、この国に来て二日後のことになる
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湖が目を覚ます前日、戻った政宗と家康はすぐに信長のものへ向かい経緯を報告する
「・・・解った」
チリリンっと、信長の手元で湖の髪飾りが揺れる
「・・・湖は、どうしても連れて来れなかったのか・・・?」
家康が言うのなら間違いは無いとは、思いつつも秀吉は口に出してしまう
「・・・無理です。連れ帰ったとしても、戻るまでに事切れてしまう・・・状態でした」
「湖は無事なのだろう・・・なら、良い。それに・・・光秀から報告があった、虎と龍の情報も裏がとれた」
信長は無表情なままそう返すと、外に張り出された板張りの方へ歩き出す
手元の髪飾りが音を鳴らした
「ご苦労だったな、少し休め」
「「はっ」」
政宗と家康が退出した部屋で、秀吉は黙ったままだった
湖は、織田縁の姫という事になっている
人質として捕虜の身とされる、情報を聞き出そうと投獄されるかも知れない
悪い予感しかしない秀吉の顔を見て、信長は口を開いた
「湖の扱いなら心配無い」
「っ・・・、御館様、ですが湖は織田家縁の姫と・・・」
はっとして、顔を上げた秀吉の言葉を遮って信長は続けた
「あやつが・・・湖を気に入っている。悪い扱いは受けん」
「あやつ・・・?」
(そうだ、上杉謙信が湖を気に入っているのは以前の事で承知している。上杉領内に湖が入ったとしても、あやつの加護で悪いようにはされないだろう・・・)
「あいつが、湖を手込めにする」
「・・・いくら上杉でも、あんな状態の湖に手は出さないでしょ」
天主からの廊下を歩きながら、政宗と家康は話をしていた
(いずれにしても、すぐに取り戻す手段を考えないと・・・)
四人が考えていることは同様のこと