第8章 敵陣の姫 (裏:謙信)
「ここ…どこ…?」
(暑い…喉も痛い…)
ぼうっとする頭を何とか動かし、横を向けば額から手拭きが落ちた
視界には、自分の手が入るが包帯が巻かれている
手を上げれば…
(っ…痛い…私…どうして…)
髪が顔にかかる
それを避けることも儘ならない
そのままでいると、数人の男の声が聞こえた
誰かが怒ってる声
(この声…)
「っ…ま、さむ、ね…」
ガタッ!
半分閉まっていた襖が勢いよく開くと、二人分の影が写った
「っ湖…!」
(やっぱり…政宗の声…)
「湖…」
(家康の声も…)
「わ、たし…どうした、の…」
「っ馬鹿野郎…」
「…崖から落ちたの覚えてる?」
(落ちた…?…あぁ…そうだ…)
「…ご、めん…いえ、やす?だいじょう、ぶ…?」
(家康…なんでそんな顔してるの?)
重痛い手を上げて家康の着物に手を掛ければ、その手を迎えるように握り返される
「っ大丈夫は、あんただ…」
それを聞くと、少し間を置き、湖は目を細めて笑った
「ほ…んとだね、めい…わ、く…て、ごめ…」
「心配の間違いだろ…お前、どれだけ……湖?」
政宗が除くと、湖は目を閉じていた
その呼吸は浅く弱い
「……駄目だ…安土までは無理だ…」
家康が握った手を下ろすと政宗と目を合わせた
「・・・こちらに預けるって、事で良いんだね?」
信玄は柱に凭れ、三人様子を見ていた
そして、家康の言葉を聞いて声を掛けてきた
「すぐに取り戻す」
「・・・湖に何かしたらただじゃ置かない」
二人はそう言うと、湖を置いて部屋を出て行った
「謙信様」
佐助は、杯を傾ける謙信に声を掛けると
彼はその手を置き、すぐに宿場を立つと言った
こうして、宿場から武将達はみんな出て行った