第8章 敵陣の姫 (裏:謙信)
湖と、聞けば謙信はピクリと反応し刀から手を離した
「政宗さん・・・あんたも、やめてください」
「っ、・・・ちっ」
家康に言われ、政宗も刀を納める
それを確認し、家康は謙信を見て言った
「湖は、織田陣の人間だ。そんな事はできない」
「・・・できないでは無い。連れて行くんだ」
家康、政宗と、謙信が対峙する
そこへのんきな声が割り込んだ
「俺は、天女が早く元気になることを考えるべきだと・・・そう思うが?」
振り返れば、湖の褥横に朱色の衣の男が一人
愛おしそうに湖の髪をときながら座っている
「っ信玄様っ!あんた、出ないって約束したじゃないですか?!」
開いた襖から更に別の男が入ってくる
「幸・・・そうだったかな?」
ニコリと、今は入ってきた男にそう返すと、立って振り向いた二人を見上げ
「ここからなら、上杉領地の方が近い。遠い織田領に動かせる程、天女の容態は良くない・・・違うかい?」
笑っているのにどこか威嚇するようなそんな表情で微笑んでいる
「・・・まさか・・・武田信玄か?」
「それに、真田幸村・・・」
政宗と家康は、謙信たち四人に囲まれるような状態だ
「ったく・・・だから見てるだけで、出て行かないでください。って約束させたのに・・・」
幸村がため息を漏らし、政宗、家康に向き直った
「はっ・・・死亡したって聞いて居たが・・・上杉と組んでいたとはな」
政宗が声を荒げた
家康もまた周囲に警戒をはり殺気を放つ
「今、この場で争えば・・・この娘は、せっかく拾われた命・・・無くすだろうな・・・」
信玄は、湖から手を離すこと無く呟いた
それに二人は、あきらかに反応を見せる
「今は、湖さんの病状を優先して上杉に預けてください。湖さんの体調が回復次第、湖さんの判断でどちらに居るか判断を任せるのはどうでしょうか?」
静まった場に、佐助の声が通る
「っ、なに寝ぼけた事を言ってやがるっ!湖は俺のものだ」
「っ・・・あんたのものじゃないでしょ・・・佐助とか、言ったね・・・確かに、湖の病状を優先するなら、助かる方に掛けた方がいい・・・だけど、湖は織田陣の人間・・・織田の縁の姫だ。上杉には渡せない・・・」