• テキストサイズ

【イケメン戦国】私と猫と

第8章 敵陣の姫 (裏:謙信)


「俺も知らないぞ、家康・・・」
「政宗さんに言うと、面倒なことになりそうだから・・・」

片膝を褥に付き、布団を持ち上げ、鈴の体を包むと身を屈め触れるだけの口づけを猫に落とす
すると、衣擦れの音ともに、猫の姿が人の姿に変わった

「な・・・」

それを間近で見ていた政宗は絶句した
また佐助も、それを見て言葉を失う
だが、謙信だけはそれを見て思い出した
以前、猫と唇をかすったことを

(あぁ、なるほどな・・・)

人に戻って、家康に片手で支えられ褥に横たわる湖の額には石で斬ったと思われる深めの傷
布団から出て見える腕にも数カ所、青あざと切り傷
その体は熱を持ち、家康の想像以上に熱かった

「湖っ・・」

政宗は抱きかかえたい衝動を抑え、家康の側に膝を付く
それを謙信は苦い目で見ていた
佐助はすぐに、お湯を手桶に用意し手当道具一式を家康に渡した
家康は、布団をめくって湖の状態を確認すると傷の手当てをし、宿で用意のあった寝衣を着せた
最後に額にぬらした手拭きを置く頃には、佐助に宿場に連れてこられてから一刻は過ぎていた

「・・・ひとまず、今できることはしたよ・・・」
「湖は、どうなんだ・・・」

政宗の問いに、

「傷は、時間を掛ければ治る。今は熱を下げなきゃいけない・・・いつから、こんな感じに?」
「湖さんを見つけて、手当てした時にはおそらく」

佐助は、思い出すように答える

「すぐに、連れて帰る」

政宗がその場を立つのを家康が止める

「今、動かせば危険だと言いましたよ・・・人の姿でも変わりありません・・・いや、状態を確認できたら余計に・・・二日も掛けて安土に連れてくのは危険です。一刻も早く・・・処置できるところへ・・・」
「では、湖は俺の城へ連れて帰る」

その場にいた男三人が、その声の方へ振り向く

「何を驚く・・・俺の城の方が、近い。すぐ隣の国は、俺の傘下の国・・・そこを中継すれば、体にも負担が掛からんだろう」
「っ・・・湖は、織田のものだ・・・」

一度政宗の腰に収まった刀が再度抜かれる

「・・・力尽くで連れ去っても良いが・・・」

謙信もまたその場に立ち、刀に手をかければ佐助が止めに入る

「謙信様、病人の・・・湖さんの側でやめてください」
/ 1197ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp