第7章 視察 (裏:謙信、政宗、家康)
先ほど、裸を見られた事を思い出し赤面する湖の手を引き「戻るよ」と言えば、また人気のない通路を使って湖の部屋まで戻ってくる
そこまでの間、湖は真っ赤になって引かれるだけで特に言葉を発していなかった
部屋に入り、襖を閉めると家康は湖に向き合うようになった
「…気にならないわけじゃないから…」
家康の脈絡のない言葉に、湖は彼を見て小首を傾げる
「…湖の肌を見て…なんにも感じないわけ無いじゃ無い…」
「…っ?!」
急な振りに、赤面していた顔は更に熱を上げ耳やら首やらまで真っ赤になる
「…っぷ、湖、真っ赤…」
家康が、それを見て吹き出す
湖は、何も言えずにそこに立ち固まっているだけだ
「ただ、診察の時は別…あんたに傷が残るのは困るから」
「っ…」
その家康の表情は、今まで見たことの無いくらい穏やかなもので湖はどきりとした
「その着物、やっぱり似合う」
「…やっぱりって…これ、もしかして家康が?」
「あの着物よりいいでしょ…」
あの着物が謙信の着物の事を指しているのはすぐに解った
でも、なんで家康が着物を用意してくれているのか疑問の表情が出てしまう
「あんたは、本当になんでも顔に出る…別に、着物を送る意味なんて何でもいいでしょ…あんたに似合うと思って用意しておいたんだ」
(本当は、だいぶ前に…以前、湖を抱いた後に用意してあったんだ…湖はそんな事覚えてないけど…)
「…すごく好き…」
「…え」
「この着物、すごく可愛いっありがとう、家康」
先ほどまでの熱が残っているのか、赤面しつつもニコリと笑う湖の表情に一瞬見とれてしまう
そんな事はお構いなく、先ほど肌を見られた事も忘れたかのように着物の袖を持ち上げ、「桜の柄、かわいいよね」とか「この色、好き」とか着物の感想を湖は伝えてくる
「…でも…謙信さまには、ほんと…申し訳ないことしちゃった…家康、謙信さまの怪我…大丈夫かなぁ…」
にこにことしていた湖の表情が一変した
家康に送られた着物は心の底から、うれしいと思う
が、同時に謙信に贈られたあの着物を思いだし、その人が怪我をしたことに心を痛める