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【イケメン戦国】私と猫と

第29章 桜の咲く頃 五幕(一五歳)


森の木々の隙間に落ちる月明かり、それは昼の日差しと全く異なる

「昼の光芒とは異なるな…月明かりは、柔らかくて、優しくて…少し寂しそうだ…そうは思わない?」

ゆったりと動くその影の周りには、這いつくばる様に倒れる男たちがいる

「君たち…なんのために、此処に集まったのかな?」
「っ、き、さま・・・っ、なぜ此処にいるっ…!!!」

扇をふわりと開いたその影を睨むように倒れた男の一人が腕を突っ張って立ち上がろうとした

「まず、俺の質問に答えてね。北条の残党が此処で何をするつもりかな…もし、此処にすむ姫たちに用事があるのであれば…」
「貴様の知ったことではない!!隠れていたければ永遠に隠れていれば、よかっただろうがっ!!何故、上杉に此処まで肩入れする!!!」

他にも数人立ち上がりそうな男たちがいるが

「うん…それこそ、君たちの知ったことではないね。だが、そうだな…美しいものは、無条件に人の心を動かす。今一度会ってみたくてね」
「っ、なんの、ことだ…」
「何のこと?君たちが狙おうとしている者と、俺の会いたい人は同じだと思ったんだけどね…違うのかな?」

ハシッ…
扇を閉じる音がやけに響く
同時に、倒れた男たちのさらに奥から草をかき分ける音が聞こえ…

「義元…貴様、此処で何をしている…」
「義元殿…」
「こんなところで奇遇だなぁ」

枝が折れる音と共に現れたのは謙信と兼続、それに信玄
さらに

「今川…義元!!貴様、信長様に打たれてもなお…っ」

秀吉だ
そして、その口元に手を当て言葉を遮るのは女の影

「秀吉、あまり大きな声をあげるな」

立ち姿は、湖に似ているが気配が違う

「あれ?君は…」

すぐに気づいた義元は、白粉を見て声をかけようとするが

「っ、あれだ!!あの女を攫え!!!」

ガバリと立ち上がった男たちが動き出せば、のんきに声も続かない
小さくため息を打つと、腰元の刀に手を伸ばし
まるで舞いのように相手を倒す
白粉の近くにいた秀吉も、向かってくる数人を一刀で倒すと
「くそっ」と小さく呟いた
もともと義元にやられ倒れた相手だ
その場はすぐに静まり、倒れた男たちからわずかに離れた場所に義元を含む6人が顔を見合わせた

「義元」
「うん?」

謙信の呼びかけに、まるで意図しない返事を返す義元
信玄はあきれた様子のため息を零した
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