第29章 桜の咲く頃 五幕(一五歳)
白粉は、湖を危険な目には合わせたくない
かといい、喜之助をそのままには出来ない
さっさと、妖の力を使えるようにすれば早いが
それは最後の手段だと決めた
(認めるしかないな…私は、私は…人として湖の傍に残りたい…いつでも湖を抱きしめられる姿で…ならば、このままの…今の自分でできる範囲で湖を守らねば…)
誰にも伝えていない
まだ伝えられない思い
妖の自分と比べ、ひどく無力に思える今の自分
これからも、この世に残るならば今の自分で出来ることをしなければならないのだ
「…湖の寝ている間に…とは行かないだろうからな。佐助は湖の傍に置く」
信玄は白粉の考えが変わらないとわかると、今からの行動を予測し始める
「信玄様、救出なら俺が…!」
幸村は信玄がその場に赴くのに懸念を見せるが…
「いや。残念ながら、綿密な罠を張るような時はない。だからこそ、救出には俺自ら行く。大丈夫だ、ゆき…解ってるだろう?」
「…はい」
信玄が言いたいのは自分の体の事だ
登龍桜に治してもらった体は、もうなんの支障もないのだ
「俺も行くぞ…」
謙信がそう伝えると、加えて秀吉も行くと言う
「俺は残ろう。こちらが手薄でも心無い」
光秀は、城にとどまる
「俺も…」
「幸村殿っ」
幸村も同行を希望しようとするが、横に座る兼続がすぐに声をかける
「なんだ?兼続」
「申し訳ありません。幸村殿は今回、此処に留まりください。此度の事は、某に行かせていただきたい」
「……」
兼続がこんな風に幸村の意思を止めるのは珍しい事だった
幸村が、そんな兼続をみれば
兼続は横に置いた刀の鞘を固く握りしめているのだ
それを見た幸村はため息をつく
「…はぁ、わかった。佐助と此処に留まる…任せるからな」
こうして
城を、佐助、幸村、光秀が
救出を、謙信、信玄、秀吉、兼続
そして、湖に扮した白粉が向かうことになった
「一家臣の子に総大将が2人とはずいぶんな顔ぶれだな」
光秀が面白そうに笑った