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【イケメン戦国】私と猫と

第29章 桜の咲く頃 五幕(一五歳)


喜之助とそんな話をした数日後のことだった

バタバタと廊下を走る音に湖と白粉は、一度顔を合わせて首を傾げた
兼続の足音なのはわかっている
いつもそれが聞こえるのは、たいてい湖を探し回っている時だが、今日は先ほどまで兼続と一緒にいたのだがら
湖探しではない

「…なんかあったのかな?かかさま」
「そのようだな」

部屋を出ようとすれば、そこには今来たばかりだろう佐助が居て

「すみません、二人は部屋で待っていてもらえますか?ちょっと領内で事件が起きたので、城内も手薄になってますから」
「…なにがった?」
「…今、確認中なので。わかったら連絡に来ます。部屋を出ないで待ってってもらえませんか?」

佐助が理由も言わずに、部屋にいるように言ってくるということは、湖にかかわる事なのだろう
察した白粉は、「わかった」とだけ言って襖を閉めた

「え?かかさま?」
「湖、何やら起っているようだが、今我らが出ても邪魔になるだけのようだ。後で佐助が知らせてくれる…今は邪魔にならぬようにしよう…」
「え…うん…わかった」

なにが起こっているのか
少し前に聞いていた「鬼」が出たのだろうか?
気にはなるが…

「歯がゆいな…本当に…」

白粉が眉を潜めるのは耳のせいだろう
妖のままであれば聞こえただろ会話が聞こえない
日々比べてしまう
不自由だと思ってしまうのだ
だが
自分の袖をぎゅっと握り不安そうな顔をする湖を見て
その子と対等な地に足をつけて居る
気持ちを共感できる嬉しさもあるのだ

(これが…不安…きっと同じ気持ちなんだろうな…湖)

「かかさま…」
「あぁ。何かあれば知らせてくれる…そう不安そうな顔をするな」

湖を抱きしめ、落ち着かせるように
自分も落ち着くように息を吐く
とくん、とくんと感じる2人分の心音を感じながら

(…生きてる音…か…)

「うん…」

湖の小さな返事が聞こえた




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