第29章 桜の咲く頃 五幕(一五歳)
狙いの対象が春日山城(そこ)にいるならば、自分の居場所は近い方が良い
情報に長けている光秀が、今回春日山城にいる理由はそれだった
そして秀吉は、前回の同行した光秀の行動に不安を抱いてここに一緒にいた
説明を聞いていると出てくる「鬼」というのと「顕如」という人物
これは、人間で同一人物だと言うのは何度も聞いていれば今の湖でもわかった
わかれば、疑問も出てくる物で…
「顕如さんって、悪い人なの?」
うーんと、首をひねりながら出た湖の言葉に
そばに居た秀吉と光秀は
「敵だっ!あの男、今度会ったら必ず捕らえてやるっ」
「…安土を打つためならどんな物でも利用する男だろうな。どうした?湖」
二人の回答、それに謙信や信玄たちにも「危険が迫っているかもしれない」と聞いていた
そして必ず「そうはさせるつもりはないが…」と、二人そろって言うのだが…
ちゃんと説明は受けている
(顕如って人が、信長さまの弱みを握りたがっているって…そもそも「弱み」が「わたし」??「わたし」が「弱み」って言うのが、理解出来ないんだけど…以前のわたしは、信長さまの「弱み」だったのかな?
何より「鬼」って…「鬼」のことだよね?)
「お坊さまなんでしょう?」
「そう、だが…?」
「お坊さまって、おじーちゃんじゃないの?あの、「なむなむ」ってしててお経の人のことでしょ?」
「お爺さんとは限らないが…お、おい、湖…??」
湖の首はますます傾げられ、「わかんない」という表情を見せる
秀吉は、湖が何に疑問を持っているのかわからず、何を言いたいのかを勘ぐるが…
「そんな「鬼」みたいなお顔のお坊さまっているの?鬼って、角があって目が大きくって、お口も大きくって…」
と、口を伸ばすように指を差し入れ「いーっ」と歯歯を見せる湖
「でも、「鬼さん」って…」
「…なるほどな」
そんな湖を見て、声を上げたのは先ほどまで呆け居ていた白粉だった
そして、「ふふ」っと笑うと立ち上がって湖のそばに寄り、その頭を撫でる
「お前はおかか様を知っているからなぁ。湖、普通の人間は本物の「鬼」など見たこともない…もちろん、おかか様のあれ(鬼の顔)だって仮の姿だがな」