第28章 桜の咲く頃 四幕(十二歳)
信長は湖の様子を見たまま、信玄には視線を寄こさずに
「戯言…にして欲しいのか?‥あぁ、言い違いか…これは、湖への祝いだ」
「ずいぶんと、たいそうな祝いだな…何を企んでいる…っ」
幸村だ
佐助と幸村もいつからか、先ほどの事がなかったような様子で話に加わっていた
「何も…いや、何もではないな。三成」
「はい。信玄様、湖様には織田家当主から甲斐の国を…すでにこちらが加わった政策もありますが、そこはまた別の場を設け、話をさせて頂きたいと思います。また、上杉家にも…この度の事を踏まえ、こちらとして現状を継続させて頂きたく…」
「ずいぶんと、以前の書面とは違うな…」
湖が12歳になり、祝いの時期を知らせた際に戻ってきた書面
それに書かれていたのは、信長らしいともいえる一歩的な過剰要求の多々
・謙信達に湖を連れて安土に出向く事
・白粉を信長に預けること
・湖を方向として安土に遣わすこと
他にも明記はされていた
「何も変わってはおらん。祝いの品は届けている。今頃、そっちについている頃だろう…」
・祝の品を届けること
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その頃、春日山城では荷車何十台分の祝いが届き
「な、なんでございますかっ!?」
(この量…っすべて祝いの品だと言うのですかっ!?)
兼続が、家臣とともにその対応に追われていた
祝いの品といって並んできた荷車、その荷車の終わりが見えないのだ
それらを受け入れるのは容易ではない
今は一時的和解をしている間柄とはいえ、荷車に怪しい物は紛れ込んでいないか
そのチェックだけでも、この量
「祝いではなく、嫌がらせを押しつけられているではないか…っ」
腹立たしい事しかない
謙信達が帰ってくる前に荷車が消えるか…
兼続は頭を抱えながら家臣に指示をだし、その横には目を見張る喜之助の姿
「何を考えておるっ!!迷惑極まりないっ!!」
「…兼続様…俺もお手伝い出来ることがあれば、します…けど、これって安土から…ですよね…」
(あいつが、しまらない顔で笑顔を振りまいてる結果だろうな…たぶん‥厄介なやつ…帰ってきたら説教だな)
「あぁーっ…謙信様、どうか湖様と…ご無事にお戻りくだされ…っ」
兼続の嘆きと怒濤が聞こえた春日山城だった