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【イケメン戦国】私と猫と

第28章 桜の咲く頃  四幕(十二歳)


目を逸らして言い訳をしようとすれば、湖の後ろから、すいっと伸ばされた腕

「え・・」

驚いたのは湖だけではない
信長や謙信、信玄も気配や動きに気づかず目を見開いていたのだ

『興味があれば、飲めば良かろう』

クスクスと笑いながら背中から抱きつかれたと思えば、
片手で顎をすくわれ、反対の手に持ったおちょこから喉に注がれたのは登竜桜お気に入りの飯山城当主の酒だ

「「「あ…」」」

気配の無い土地神の行動に、武将たちも追いつけず
湖の喉がごくりと酒を飲込んだのに、何人かが声を漏らした

ごくり…こく、こくん…

溢れた酒が顎を滴り落ちる様は一瞬のはずなのに長く感じる

『旨かろう?』

おちょこがどかされ、体制を崩した湖はそのまま登竜桜の方へと軽く倒れ
その身は、しっかりと受け止められる
だが、返答がない

『…湖?』
「っ、おかか様っ!!湖は、まだ子どもです!酒など…っ」

その行動に唖然としていた白粉が、弾かれたように席を立ち湖と登竜桜の元へ駆けつければ、家康も同様焦って様子を伺いに来る

「ちょっとどいて」

白粉を片手で押すと、登竜桜に寄りかかったままの湖の頬に手を添える

「家康様っ」
「家康っ」

三成と政宗の慌てた声と同時に、幸村と佐助、それに信玄も「湖」とその名を呼んだ

「湖、返事は」

慌てる彼らを背に、家康は湖に声をかける
そんな様子に登竜桜もまた

『…なにかまずいことをしたか?』
「湖が人だと言うことをおかか様は忘れてはおりませんか…」

白粉に睨まれそう言われれば
まずかったのか?と湖の様子を見る彼女

『悪い。すぐに酒を抜いてやろう』

そう言い額に指を乗せようと登竜桜の手が頭上に来たときだ

はしっ

きれのいい音と共にその手が払われ、目の前に居た家康の胸を軽く押して、すっと立つ湖

『湖…?』
「ふふ…」

(((((ふふ?)))))

誰もが何事だと思った

「っふふ…ふふ」

「お、おい…湖」
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