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【イケメン戦国】私と猫と

第28章 桜の咲く頃  四幕(十二歳)


「俺も、この音は聞こえてる。けど、もう少し音量上げて欲しい」
「俺には聞こえない」

白粉、佐助、信玄
それぞれがそう答えると、湖は満足そうに笛を仕舞う

「ね?聞こえたでしょ?」
「……それでも、気をつけろ。私は、今は普通の人同様だ…何かあっても、すぐには駆けつけられない…」
「そうは言っても、白粉さんなら誰より早く駆けつけそうですけどね」

歩きながら、敷布で待つ彼らに近付きながらの会話

「佐助、湖を頼む」
「もちろんです」

白粉のため息をつく姿を見て信玄が苦笑した

「おいおい、俺もいるぞ。それに、謙信、幸村、兼続も…癪だが、彼奴らも…敵でなければ、心強い奴らだ」

進む方向にいる彼を見る
湖は、くすりと笑って

「みんな強そうだもんね…でも、私、一番強いのはととさまだと思ってるよー」
「俺の姫にそう言われるとは…光栄だな」

えへへと笑って信玄を見てから

「そんでね、謙信さまもおんなじくらい強くって。佐助にーさまも、幸も…兼続は…あんまり戦ってるところ見たこと無いけど、強いと思う。政宗と光秀さんも強いよ。あと秀吉さん、謙信さまとやり合ってたよね?強いんだよ、きっと。三成くんと家康はすごく頭が良くて、きっと二人も強いんだと思う。信長さまも…あの雰囲気だもん、強いんだよね?すごく俺様っぽいけど…」

ふふっと、笑い白粉の袖口を引くと

「でも、誰よりも心強いのはかかさまよ。妖だとか人だとか、私にとっては関係ないの。かかさまが…白粉が側にいてくれる…それだけで安心できるの。だって、湖のかかさまだもん」
「…湖」

白粉より手の平一つ分ほど低い背の湖は、母の顔を覗き見て返答を待っているのだ

「そうか……」

ひとつ、そう呟くと
おもむろに湖を抱きしめて立ち止まる

「今の私ではお前は持ち上げられそうにないくらい大きくなったな…それでも、抱きしめることはできる」

首筋から聞こえた白粉の声に笑みが含まれているのがわかれば、登竜桜も信玄も佐助も
そして湖も微笑んだ

「どれ…湖、ちょっと来い」
「あ…信玄様…」

佐助が制する間もなく、信玄はひょいと湖を抱えると

「うん。確かに育ったな……」
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