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【イケメン戦国】私と猫と

第28章 桜の咲く頃  四幕(十二歳)


「では、俺もその時は一緒させてもらいます」
『…護衛として来るつもりか?それとも兄役なのか…佐助は、どちらを選ぶのだ?』
「湖さんの希望のままに」

すっと佐助の額に指を当てた登竜桜が尋ねる

『お前の刻調整はこれで終わりだ。元の年齢で良いのだったな?』
「はい。お願いします…貴重な体験をさせていただき、ありがとうございました」
『…なにを仰々しい』

くくっと笑うと、額をトンと押す

佐助もまた暑くなる感覚と共に、自分の身体の成長を感じた
細身でありながらも筋肉がしっかり付いた身体、背も更に高くなった
手首も今までより太くしっかりした物に変わる

パンパンと、登竜桜の手を叩く音で佐助の着物の調整がされた
すっかり元の姿に戻った佐助は、くいっと眼鏡をあげる動作をすると

「うん。戻った」

と自分の身体を確認する

「…兄さま…更に格好良くなったね」

ぽかんと口を開けるのは湖だ
今まで少しずつ年を取っていた佐助が、急に元に…大人になってしまったのだから、驚くのは無理ない

「褒め言葉をありがとう。湖さん」

一切変わらない表情

(あぁ、間違いなく佐助に戻ってる)

『おかしな事を言う。此奴は元からこうだ』
「そうなんだがな……幼い佐助が表情があったせいか、思いの外…寂しいと感じるな」

複雑そうな表情をした信玄に佐助が「父上、寂しい事はないでしょう。本人が此処にいるのだから」と冗談めいていうのだが…

「真顔で言われると…悪い、少し寒くなったぞ」

今度は顔色悪く答えた信玄

「……今度、段蔵さんに変装を教えてもらおうかな」

幼い自分にでも戻るつもりなのか、佐助は冗談なのか真面目なのかそう小さく言ったのだ

『さて、戻らねば彼奴らの思考が騒がしくなってきたな。湖、お守は与えてある。信玄の胸の病は…お前も見て解るだろう?もう不要だ。安心しろ』
「うん。見えてる」
『お守は変わらん。三度までだ…この約束は決して破るな。』
「はい、約束します」
『…白粉、しっかり見張れ』
「…今の私でできる限りの範囲ですが、かしこまりました」

妖の力を封じられた白粉は、ため息をこぼす

『我が娘よ……まずは、何も難しく考えず過ごしてみよ。何を望むか…自ずと見えてくるだろう』
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