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【イケメン戦国】私と猫と

第28章 桜の咲く頃  四幕(十二歳)


「……そうか…」

「治しきれない」はっきりそう言われれば、信玄はわずかに表情を変える

『しかし、それでは湖が泣くかもしれんからな…湖、その顔を止めろ…』
「っ、だって…」

信玄と白粉に挟まれて立つ湖の顔を見れば、すでに泣きそうなのだ

『儂は、お前の泣き顔は好かん…』
「っ…」

ぐっと、下唇を噛みしめた湖に

『…特別だ』

ニヤリと登竜桜は不敵に微笑む

「え・・?」
『治してやろう。完全に』

信玄の胸に当てられた登竜桜の手、桃色の光を纏えば
登竜桜と湖にだけ見えていた信玄の胸の靄が無くなるのだ

「え…」
「あ…っ」

信玄は、置かれた手に驚き
湖は、靄が見えなくなったことに驚いた

『儂からの裳着祝いだ』

信玄から離した手で、すぐさま湖の額をトンと押せば
わずかに暑いと感じる身体
身体の中から熱が一瞬溢れるような錯覚

「っん…っ」

湖が胸を押さえて、少し前屈みになれば
肩まで切りそろえた髪が徐々に伸び、背中を隠すほどになる
まだ前屈みだが、背丈はそう変わりないだろう事は解る
今までのように着物が開けたりはしていないのだから

「湖、大丈夫か?」

白粉にそう言われて、湖は軽く息を吐いた

「うん。大丈夫」

ゆっくりと、姿勢を正した湖
変わりは…あった
少女から女性へと近付く年頃、湖の身体の線は女性になっていた
細いながらもくびれた腰元の下に丸みのある尻
胸元は小さいながらもちゃんと膨らみ、ぴっちり合わさっていた袷がきつそうだ
そして、香りが強くなった甘い花の香り

『お前のその香り…儂と同様にも感じるが…少々強いな。弱めておくぞ』

再度、湖の額に指を当てれば
強く感じた香りはうっすらと香る程度になる

「湖さんは、十五で成長止まったんだな…」

佐助の言葉に信玄も同意だった
自分の横にいる湖は、以前の湖だと言っても通じるだろう

(違いと言えば、よく見れば顔つきが少し幼く、多少だが背と女性らしい線が足りない。前はそこまで感じられなかった好奇心旺盛そうな瞳くらい、か…)
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