• テキストサイズ

【イケメン戦国】私と猫と

第28章 桜の咲く頃  四幕(十二歳)


「…兄さま、それ。湖がよっぽど変な子みたいだよ」
「…失礼」
「っ、兄さま!」

ポンポンと、佐助の腹を叩く湖
本気ではない
頬を膨らませ拗ねたような表情を見せるのだ

「もう…かかさま、いこ?」
「あぁ」

佐助、湖、白粉も順に立ち上がり
信玄と共に、先に桜の木の方へと歩き出した登竜桜に続いた

四人が登竜桜に追いつけば、登竜桜桜は一つ手を打つ
パンっ
と、音が響けば

「…あっちの声が完全に聞こえなくなったな」
「あぁ。どうやら秘密にした内容のようだな」

秀吉と光秀の言うように、桜の元へ歩いて行った彼らの物音、話し声は全く聞こえなくなったのだ

『さて…これで、こちらの話は聞こえまい…で、さっそくだが…湖、約束を破ったな』

登竜桜の言う「約束」は直ぐに解る
お守の事だ

「ごめんなさい…」
『お前の記憶をもう一度覗く…此方に来い』
「はい」

いつものように指で額を軽く触れると…

『……なるほどな…そのような状況であれば、致し方無いか』

と、湖が信玄に「お守」を見せた状況を理解したのだろう小さく声が聞こえた

「ごめんなさい、桜さま…お約束破って」

一度指を離し、信玄を見ると登竜桜は軽く息をつく

『湖も、白粉もちゃんと話してないようだな…儂が伝えてやろう。湖のこの力…「お守」は儂が湖の為に持たせた儂の力だ。この娘が、泣かないように…傷つくことのないようにやった力。儂と会うまでの間、使えるのは三度まで…三度以上使えば、湖と鈴の調整に悪影響を与える可能性もある』

『人に守りを与えるのは初めてでな、儂も想像が付かんところが正直ある』と、小さく言いながら登竜桜は言葉を続けた

『この子は、とくにお前に懐いているな…認めているんだろう、自分の親だと。湖がそう認めたなら仕方あるまい…親に早くに死なれては、湖が泣くことになる…それは、儂としても面白く無い』
「では、長生きできるようにがんばらないとな」

ははっと笑う信玄の前に登竜桜が近付くと

『これは、湖では治しきれん病だ』
/ 1197ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp