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【イケメン戦国】私と猫と

第28章 桜の咲く頃  四幕(十二歳)


「っ、そんなに喧嘩したいなら、湖の裳着なんて放っておいてやってくればっ!?私は、かかさまと二人で行くからいいっ!」
『…そうだな。私は少しでも静かな方が今はいい…』

白粉の今回の酔いの悪さには、湖が一枚関与していた
春日山城を出た直後、彼女が乗った馬は風花だ
湖が、楽しげに馬を跳ねらすのだから当然酔いは酷くなる
すぐに佐助の馬へと飛び乗ったが、今回の調子の悪さは今まで絶大だった

『むしろ、今すぐおかか様の元へ向かいたい』
「だね。かかさま」

うんうんと、自分抱える白猫を見て湖はぷっくりと頬を膨らます
怒っているのだと解るが、その怒り方はまだ童だ

「…成長したのは見た目だけか…」

それに、信長も目を細めて湖を見た

「よく解んないけど、私はかかさまを困らせる人は嫌いです」
「…その猫を困らせた覚えはない」
『今、まさに困っている…私は、さっさとこの不調を治したいのだ』

あからさまに具合の悪そうな白猫に、信長は不審な視線を浴びせる

「白粉…貴様、なにがあった」
『何もない。馬酔いなだけだ。さっさと、おかか様のところへ向かいたいだけだ』

凜々しい髭も、尻尾も見る影がない
うなだれた白猫の様子に、刀を納める武将もいた

「…これは、早めに向かった方がよろしいかも知れませんね」
「三成くん…っ」
「猫に飲ませる酔い止めの薬なんて知らない…治せるなら、さっさと土地神のところに行った方がいい」
「っ、家康」

二人の様子に、湖の表情も晴れた

「政頼、酒を」
「はっ、すでに用意済みでございます」

いつもの倍用意された酒
政頼の酒で荷台が二つ
果物や干し物を積んだ荷台が一つ
そして安土からの酒を積んだ荷台が二つ
合わせて五つの荷台を、幸村、政宗、秀吉、三成、佐助が引いて森を進んだ
先頭を歩くのは、湖と白粉
その後に信玄、謙信、信長、荷台組、さらに光秀、家康が着いていく

入り口にさしかかれば、打たれた手の音と共に視界は桃色になるのだ

「っ、桜さま」

思わず掛けだした湖は、登竜桜の胸に飛び込んでいく

『湖、白粉。おかえり…佐助もな』
『ただいま戻りました。おかか様』
「ただいま、桜さま」
「またよろしくお願いします」

荷台を下ろした佐助が瞬歩で近付く
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